SFミステリー小説:永遠の秘密
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第1回:はじめに
私は沢木キョウ(さわぎ・きょう)と呼ばれている。しかし、この名前は私の本当の名前ではない。本当の名前は・・・。今はまだ言わない方がいいだろう。
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この物語は、私『沢木キョウ』の身に起きた不思議な出来事をまとめたものである。
なぜ私がその出来事に遭遇したのか。それは、私の持つ特別な能力と関係している。信じる信じないは読者の皆さんの自由だが、私の目は他人のウソを見破ることができるのだ。
右目だけを使った場合、ウソを言っている人の周りに赤黒いモヤがかかっているように見える。その姿はまるで悪魔のようだ。だから私は、この能力のことを『悪魔の右目』と名付けた。
この能力は生まれついて私の右目に宿っていたものではない。二十年ほど前、私が小学六年生のときに『ある人』と出会ったことがきっかけで、『悪魔の右目』が私の目にやってきたのだ。そして、その出会いが私のその後の人生を大きく変えることになるとは、そのときの私には全く想像できていなかった。
その『ある人』はもうこの世にはいない。そして、あのときに何が起きたのか、を覚えている人も今はもうほとんどいないだろう。だから私は、私の恩人とも言える『ある人』がみんなの記憶から消え去る前に、『沢木キョウ』の右目が『悪魔の右目』になったときの様子を一冊の本にまとめるべく今この文章を書いている。
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読者の皆さんには、私の身に何が起きたかを出来るだけ客観的に伝えたいと考えている。だから、私自身のことも、この物語の中では単なる登場人物の一人として記述させていただいた。
もちろん、私以外の登場人物の心境や私がいなかった場所で起こった出来事は、本来であれば私には知る由もない。しかし、それは彼ら彼女らの当時の言動や、その出来事が起きたあとに彼ら彼女らと話をしたことから類推した。そのため、各々の登場人物の心境などに関しては、ある程度は私個人の解釈が含まれていることをご理解いただければと思う。