海外ラボリポート



高尾大輔 博士 〜米国ミシガン大学から(2016年2月10日更新)

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研究環境

一言で言うと、とても良い環境です。

研究室はいわゆるオープンラボです。私のいる部屋はやや小さい部類ですが、それでも4つの研究グループが同居しています。大部屋に実験ベンチとデスクが均等にならんでいて、研究グループごと(さらに各個人)にそれらが割り振られていますが、その間に壁のような仕切りはなく、文字通りオープンなスペースです。

大きなメリットは、他の研究グループのメンバーと盛んに交流できる点です。研究内容的に接点が少ない近隣の研究グループのメンバーとも日ごろから気軽に交流できるので、ちょっと足りない試薬を借りたり技術的な相談に乗ってもらったりということは日常的に行っています。

他にも、顕微鏡コアのようなコアファシリティーの充実など、研究環境面での良い点はたくさんあります。これらはおそらくアメリカの多くの大学に共通していることであり、私個人の何か特別な体験があるわけでもないので、ここでは詳細は省きます。好みの問題もあるので一概には言えませんが、効率よく研究を進められる、良い環境だと個人的には思います。


研究室のパノラマ写真

英語について

おそらく多くの日本人にとって最も大きな心配の一つが、英語(英会話)の問題だと思います。私自身の英語力はどうであったかと言うと、一応面接から採用に至る程度に会話できるレベルにはありましたが、採用に際して「君の英語力に関しては大変心配である」と言われてしまうレベルでした。

渡米した直後はグループミーティングでの会話にもなかなかついていけずにかなりのストレスでした。英会話力に関しては、とにかく場数を踏むのが一番大事だと思います。リスニングについては英語環境で暮らしていれば嫌でも毎日英語が耳に入ってきますが、スピーキングについては自分次第の部分もあるので、より顕著に経験の差が出ると感じています。

最初の数か月は英会話力の向上にかなりのエフォートを割きました。大学が留学生向けに開催しているイベントがたくさんあり、例えばアメリカでの生活に関する講習会や英会話サークルなどには積極的に参加しました。また、留学生向けの英語クラスも受講しました(これは有料でしたが交渉により研究費で負担してもらえることになりました)。他にも通りすがりの人に話しかけるなど、なるべく生活の中で英語を使う機会を作るようにしました。

これはアメリカの田舎町ならではなのかもしれませんが、フレンドリーな人が多いので、例えばバスを待っている時やスーパーのレジを待っている時に、たまたま隣にいた人から話しかけられて雑談をすることがよくあります(今日は寒いね、などといった本当にたいしたことない雑談です)。逆に言えば、こちらもそうやって知らない人に話しかければいいのです。

先述の大学主催の講習会で、「英語を使う機会を増やしたいのだけどどうすればいいのか」と質問した人に対して講師が「ここはアメリカですよ。英語を話す人なんてそこら中にいます。いくらでも話せばいいじゃないですか」と冗談半分に言ったのが印象的でしたが、本当にその通りだと思います。実際、急な夕立で雨宿りしている時にたまたま一緒になった人と雑談して盛り上がってそのまま友達になった、という経験があります。本業の研究に専念したいので、ある程度慣れてくるとさすがに講習会や英会話サークルなどには時間を割けなくなりましたが、このような場で知り合った人たちとの交流はその後も続いています。

仕事での会話に加えて、趣味が合う人や気が合う人との交流は、英会話の上達にとても役立ちます。さらに、このような交流はネットワークの構築にもつながります。海外での生活には、日本にいるより比較的容易に(とはいえかなり大変ですが)国際的なネットワークを構築できるというメリットがあります。

私の場合英語の苦手意識もありましたが、それでもこの3年間の努力でかなりネットワークが広がりました。ここでも、英語でのコミュニケーションスキルを日常生活の中で身につけられるという点が大きいです。個人的な感想ですが、雑談、特にグループでの雑談は研究の話に比べて圧倒的にハードルが高いです(研究の話は相手と背景知識を共有している場合が多く、何の話をしているか予測しやすいので比較的簡単)。日ごろからいろいろな人といろいろな話をする経験が、研究に関するネットワークの構築にもかなり役立つと思います。

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