研究者インタビュー



2015年10月23日更新

カリフォルニア大学サンフランシスコ校 岡田秀穂 教授

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で臨床医科学者としてご活躍中の岡田秀穂教授にお話を伺いました。岡田先生は 、長年がん細胞(特に脳腫瘍細胞)に対する免疫機構の基礎研究に従事され、そこで得られた成果を患者さんに還元するために、新しい免疫療法の開発に精力的に取り組まれています。

18年間勤務されたピッツバーグ大学では、活躍が目覚ましい研究者に授与される賞を幾度も受賞され、 2010年にはAmerican Society for Clinical Investigation(ASCI:米国臨床研究学会)の会員に選出されました。 ASCIは、臨床医科学者が集う最も権威ある学会の一つです。岡田先生の研究に対する熱意が有効な免疫治療法へと実を結び、少しでも早く患者さんのもとに届くよう願ってやみません。


Q. 岡田先生は現在どのようなご研究をされていますか?

脳腫瘍の免疫治療の研究をしています。研究は基礎と臨床におよび、マウスや細胞系を用いた前臨床試験、それをもとにした様々な免疫治療法の開発と臨床研究の実施、また臨床研究から得られたサンプルやデータの解析をして次の治療法の開発につなげてゆくというような研究をしています。


Q. 現在のご研究テーマの何が重要かを教えていただけますか?

自分自身は腫瘍免疫学を20年続けていますが、この分野は最近ようやく注目されるようになってきました。ヒトの免疫系は実に巧緻な仕組みで自己と非自己を見分けます。では、患者さん本人の組織から発生するがん細胞は免疫系にとって自己なのか、非自己なのか。遺伝子異常が重複して起きるがん細胞は、非自己と認識されるような要因を持っていると考えられますが、その免疫原性は十分ではないか、もしくは、うまく免疫監視機構から逃れていると考えられます。こうしたメカニズムの解明と、現代のバイオテクノロジーを駆使した治療法の開発は非常にダイナミックで、なおかつこれまで治療困難であったがんの有効な治療法として確立しつつあります。


Q. 先生はなぜ 研究者の道を選ばれたのでしょうか?

自分は医師でもあるので、患者さんと疾患を知っている立場として基礎と臨床の懸け橋になる仕事がしたいと考えたのが始まりです。


Q. 現在のご所属先を選ばれた理由は何でしょうか?

日本で臨床と研究のトレーニングを終えて、2-3年のつもりで、脳神経外科、がん免疫、および臓器移植などの分野で名門と知られるピッツバーグ大学に留学しました。たくさんの苦労もありましたが、幸運なことに研究が発展し、スタッフとして残ることになりました。ピッツバーグ大学での18年間の仕事の後、カリフォルニア大学サンフランシスコ校からお誘いをいただき、2014年から移りました。どちらも素晴らしい施設です。


Q. 先生の将来の夢は何ですか?

免疫治療を用いて、現在は極めて予後が不良な脳腫瘍の患者さんに福音をもたらすことです。これまで何十年もの間、治療法の開発にかかわらず予後の改善しなかった厳しい疾患なので、これは大きな目標ですが、不可能な目標ではない、むしろ、最近の免疫治療の発展を鑑みると可能な目標と考えています。


Q. 貴重なお話をありがとうございました。最後に、 医学研究を志す若手研究者や学生へ先生からのメッセーシをお願い致します。

若手研究者には、チームワークやリーダーシップを磨いてほしいと思います。今までにも増して、共同研究やグループ研究が大切になってきています。これは、基礎研究にも臨床研究にも言えることです。

高校生・大学生・大学院生には、医学研究は狭い世界ではなく、専門性が高いがゆえに、むしろ同じ分野や関連分野の世界中の人と交流することが必須となる、外に広がった世界であることを知って頂きたいです。

***岡田先生からのお知らせ***

現在(2015年10月現在)、ポスドクを募集中です。小児の脳腫瘍の免疫治療のターゲットになる新しい抗原を発見し、そのエピトープを同定、T細胞レセプターのクローニングにも成功しました。これをベースにしたさらなる解析と臨床開発への研究をしてくれる方を探しています。T細胞の培養と遺伝子組み換えができる方を歓迎します。興味のある方はご連絡ください。


(インタビュー:今清水真理)

Hideho Okada MD, PhD
 University of California, San Francisco
 Department of Neurological Surgery
 E-mail: hideho.okada@ucsf.edu
 http://neurosurgery.ucsf.edu/index.php/about_us_faculty_okada.html

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