医学生物学系のPh.D.研究者として企業で生き抜く方法



第9回(更新日:2012年9月21日)

研究能力の低下をいかに防ぐか 1ページ目/全2ページ

本連載を第1回目から読んでいただいている方は何度も目にしていることなのですが、本連載は、博士号を持っている研究者がいかにして日本的な企業で生き抜いていくかを考えいくことを目的としています。

ここ数回は、これまでの定説(?)とは逆に、敢えて目立たない社員として生きていくという方法について紹介してきました。詳細は過去の連載記事をお読みいただければと思いますが、簡単にその方法を述べれば「良い意味でも悪い意味でも目立たずに平穏な会社員生活を定年まで送ろう」ということになります。

ただし、前回の最後にも触れましたが、この方法には潜在的なリスクが少なくとも二つあります。それは、「研究能力の低下」と「人脈の断絶」です。そこで今回は「研究能力の低下」について少し掘り下げていこうと思います。

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やや暴論に聞こえるかもしれませんが、日本的な企業(特に博士卒を多数新卒で採用できるような規模の会社)では、研究職にいる社員の評価ならびに出世は研究能力とは関係ないところで行われます。しかも、その判断基準は時とともに変わります(主には“誰が”もしくは“どの派閥が”上層部を占めているかによって左右されます)。したがって、素晴らしい評価を受け続けていた研究者が、突然悪い評価を受けるようになるということは珍しくありません。それほど「人」に左右される判断基準というのは移ろいやすいものなのです。

そういった背景も含めて、「目立たない社員」として生きていくというのは、定年まで安定して会社生活を送るのに妥当でありうると私は考えているのです。

ただし、社内の判断基準が変化していくように、研究の世界も刻々と変化しています。しかも、判断基準は良い方向にも悪い方向にも進みえますが、研究分野は常に発展しており、少し気を抜くと最新の研究もしくは実験手技についていけなくなります。したがって、「目立たない社員」になることに必死で「社内での判断基準」および「自分の序列」のみに目が行くと、いつの間にかに研究者としての能力が落ちていってしまいます。

このことは、何も「目立たない社員」になることを目指した社員にのみ当てはまるのではありません。出世することに必死で、社内派閥の力関係にばかり気を配って社内政治をして偉くなった人間が、いかに時代遅れで意味のない研究指示を出しているかを想像してみてください。あなたがもし会社にいるのであれば、このような管理職・役員はすぐに何人も思い浮かぶのではないでしょうか。

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