医学生物学系のPh.D.研究者として企業で生き抜く方法



第13回(更新日:2013年1月18日)

他人に自分を大きく見せる方法 2ページ目/全2ページ

さて、ここで一つの問題が出てきます。社内での仕事内容は基本的に社外秘であり、外に出すときには注意が必要です。そのため、自分の専門性を理解するためとはいえ、自分の履歴書を作るときには、この点に気を配らないといけません。

しかしながら、「具体的な事例」がないと他人は自分の言っていることを基本的には信用してくれません。ところが面白いことに、「具体的な事例」が少しでもあると、他人は自分の言っている内容を「具体的な事例がない」ことまで勝手に信用してくれたりします。

例えば、「私は培養実験のエキスパートです」と言っても、それを信用してくれるようなお人好しはほとんどいません。しかし、「私は○○という会社の○○という部署で○○年の間に複数のプロジェクトに関わってきました。そのうちの○○というプロジェクト(曖昧な名称でも可)では、○○という細胞など全部で○○種類の培養細胞を使って○○という手法で〇〇のことをやってきました。etc」というように具体例かつ数字を示して伝えれば、自分が培養実験のエキスパートということを信じてくれる人は出て来ます(仮に自分がそのプロジェクト内では試薬の調整しかしてこなかったとしても!)。

このような感じで、履歴書を書く際に出せる情報と出せない情報を明確に区別した後で、出せる情報は出来るだけ具体的に、出せない情報に関しても出せる範囲で数字や一般名称(プロジェクト名を一般名称を使って自分で勝手に考える等)を使って、なるべく具体的な情報であるかのように記載してみましょう。

 もちろん、全くの嘘はいけません。しかし、私たち日本人はおかしいぐらいに自分を小さく見せようとしています。謙虚な姿勢というのは悪くありませんが、社外の人に自分を研究者として認めてもらおうというときには、必要以上に自分を小さく見せる(卑下する)必要はありません。

 私の個人的な感覚ですと、一般的な日本人は、自分という研究者を外で説明するときは、事実より2倍くらい大げさに言うと良いと思います。そのため、履歴書を作成するときも、自分でこんなに大げさに自分はすごいんだと言ってもいいのだろうか?と思うくらい自分を良く見せる内容を書くと良いでしょう。

さて、この連載の大きな目的は、博士号研究者がいかにして企業で生き抜いていくかを考えることです。そのための主戦略として私は、会社内では目立たずに、でも研究者としての自負は持ったまま成長して会社外では一人の独立した研究者として見てもらえるように努力する、ということを提唱しています(今回は会社外に目を向けた内容でした)。

 次回からも引き続き、少しでも皆さんのお役に立てるような内容を含む文章を書いていこうと思います。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

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執筆者:川口隆史

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