教授と僕の研究人生相談所



第36回(更新日:2015年1月19日)

努力すれば報われるというのは錯覚だ 1ページ目/全2ページ

教授「今日は時間もないし、適当に相談に答えて終わりにするぞ」

僕「はい。いつもお忙しいのにお時間ありがとうございます。でも、せっかく相談をいただいているのに、適当っていうのは・・・」

教授「何か文句でもあるのか?」

僕「い、いえ、ないです。では、こちらの相談をお願いしてもよろしいでしょうか」

教授「ふむ。30歳後半の男性研究者からの相談か」

僕「はい。ご自身のことを『助教という名のポスドク』と表現していますね」

教授「当たらずとも遠からずだな。『助教』は『Assistant Professor』と訳せるが、その実態はポスドクに近いからな。まあ、とは言え、助教とポスドクは明らかに違うがね」

僕「そうなんですか?」

教授「全然違うね。そもそも雇用契約が違う。だから社会的な地位も当然違ってくる」

僕「はあ」

教授「ま、アメリカなんかだとAssistant Professorと言えば独立ラボを持ってることが多いから、それと比較すると自分はポスドクなんだろうな、と思ってしまう助教がいることは理解できる」

僕「『独立ラボを持ってることが多い』ということは、独立ラボを持っていないAssistant Professorがアメリカにもいるってことですか?」

教授「普通にいるよ。特に今は珍しくなくなってきたようだ」

僕「え、そうなんですか?」

教授「あの国も研究費が削減されてるのに研究者の数は増え続けてるからな。色んな歪みが出て来ていると聞く。その関係か、完全に独立は出来ないが、それなりに研究歴の長い研究者が、名ばかりのAssistant Professorとなって小グループを形成して、ビッグネームなProfessorのラボの下部組織となってるらしい。ま、聞いた話だから、どこまで本当かはわからんがな」

僕「へー。でも、それって日本の昔ながらの大講座制みたいですね。教授の下に准教授やら助教が連なってるって感じですもんね」

教授「まあな。俺の聞いた話では、実際は日本の大講座制とは微妙に違うようなだ。そんなことより、相談内容に戻るぞ」

僕「あ、はい、そうでした。脱線してすみません。でも、この話題ちょっと気になるので、お時間のあるときにまた教えてください」

教授「断る」

僕「えー、そんなこと言わず」

教授「気が向いたらな。とりあえず今は相談内容に集中するぞ。今日は早く終わりにしたい」

僕「はい。えっと、今回の相談者はどうも研究に興味がなくなってしまったようで、このまま今の職を続けてもいいものかと悩んでいるようです。相談文を読む限りでは、今の研究者余りの状況から自分は教授(注:一般名詞としての教授)になって自分の研究室を持つということもないので、研究に興味を持っていても自分の好きな研究は出来ないだろうという思いもありそうです」

教授「奇遇だな」

僕「え?」

教授「俺も研究にはもう興味がない」

僕「そんな・・・。でも、もしそうだとしたら教授は今回の相談者の気持ちはよくわかります?」

教授「わからんね。俺と相談者には大きな違いがあるからな」

僕「どんな?」

教授「俺は悠々自適な老後を送れるが、この相談者の将来は暗い」

僕「相談者を煽りつつどん底に突き落とさないでください」

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