教授と僕の研究人生相談所



第51回(更新日:2015年8月17日)

嫁を自分のテクニシャンにする男は情けない 1ページ目/全2ページ

教授「誰のアイデアだ?」

僕「え?」

教授「俺はこの連載を抜けると前回言った」

僕「はい」

教授「君はわかっていると思うが、俺は本気でこの連載を辞めるつもりだった」

僕「はい」

教授「だが、次の連載の原稿のために俺は今君の目の前にいる」

僕「はい」

教授「その理由は君から送られてきたこの写真(下図)なわけだが」

      

僕「はい」

教授「八海山を土産(エサ)に俺を誘き寄せる、というアイデアは絶対に君では思いつかないはずだ。誰からの入れ知恵だ?君はこの連載のことを誰かに話して相談したのか?」

僕「いえ、そんなことはしていません。このアイデアは読者からのメールなんです」

教授「メール?」

僕「はい。前回の記事が公開された直後に、教授のファンという方から、『この連載が本当に終わってしまったら嫌です。八海山というお酒を買ってそれを手土産にするというアイデアはどうでしょうか。八海山は有名なお酒でちょっと高いですが、手が出ないというわけではないと思います。このお酒を手土産にすれば、教授は再び僕との会合に来てくれるのではないかと思います』という内容のメールをいただきました」

教授「で、君は素直にそのアイデアを実行し、俺は見事にそれに釣られたということか?」

僕「釣られた、ということではないと思いますが、お盆前のお忙しい時期にお時間をとってくださってありがとうございます」

教授「ふん、さっさと終わらせるぞ」

僕「はい。今回はこの相談をお願いしたいと思っています。博士課程3年の男性の方からです。長年お付き合いしている方がいるらしいのですが、その方との結婚についての相談です」

教授「君としては破局につながる回答の方が嬉しいか?」

僕「ええ、できればそちらの方が嬉しいです」

教授「君は相変わらず馬鹿正直だな」

僕「もちろん冗談ですよ」

教授「冗談を言っているようには見えんがな」

僕「冗談ですって」

教授「どっちでもいいよ。で、どんな相談内容なんだ?」

僕「えっと、お付き合いしている方は大学で1学年下だったようなんですが、修士課程を終えて◯◯に就職したようなんです」

教授「ほぉ、優良企業じゃないか」

僕「大学も◯◯ですし、相談者の方もお付き合いしている方も優秀なんじゃないでしょうか」

教授「そうかもしれんな。で、相談内容は何だ?先に社会に出てしまった彼女が会社の先輩に憧れているようで困ってるとかか?まあ諦めるんだな。そんな優良企業での先輩と、今後どうなるかわからない博士課程の学生では勝負にならんよ。社会的地位も給料も将来の見通しもな」

僕「教授、話が変な方向に進んでいます。今回の相談内容は全然違います。相談者は学位取得のあとに海外留学をしたいようですが、そのときに彼女と結婚して留学に付いてきてほしいらしいんです。でも、彼女さんはあんまり乗り気に見えないようなんです」

教授「会社に新しい恋人がいるんじゃないか」

僕「相談者を不安にさせないでください」

教授「ふん。留学に付いてきて欲しいということだが、彼女の仕事はどうするんだ?退職して主婦になってほしいのか?」

僕「えっと、明確には書かれていませんが、きっとそういうことではないでしょうか。相談者は可能であれば海外で自分のラボを持ちたいと書いてありますし、彼女に日本の仕事をキープしてもらおうという考えはなさそうです。あと、彼女さんは相談者の研究分野の経験があるらしいので、自分を公私ともに支えてもらいたいとも書いてありますね。でも、公私の『私』はなんとなくわかりますが、『公』でも支えてもらいたいってどう意味なんでしょうか」

教授「留学先のラボのテクニシャンとして実験を手伝ってもらいたいんじゃないか?で、無事に独立した後も、引き続き自分のラボのテクニシャンもしくは秘書的な働きをしてもらいたいんじゃないか」

僕「独立して自分のラボになれば自分の奥さんをラボ・メンバーにするのは可能そうですが、ポスドクの立場で自分の妻を所属ラボのテクニシャンにするなんてことは可能なんでしょうか?」

教授「給料を要求しなければ簡単だよ。無料の働き手ならラボのボスがノーとは言わんだろ。というか、そんなことは良くある話だ」

僕「え、そうなんですか?」

教授「ああ、よく聞くね。まあ人それぞれ色んな考えがあるだろうが、はっきり言って俺はそういう男は情けないと思うね」

僕「なぜですか?」

教授「公私ともに支えてもらいたい、と言えば聞こえはいいが、常に妻を束縛して自分の言う通りに動かしたいんだろ。もしくは、自分一人では不安だから、常に妻と一緒にいたいだけなんじゃないか。で、自分の能力に下駄を履かせたいんだろう。いずれにしろ情けない話だよ。本当の男なら、もっと懐広く、妻となる人間の人生もきちんと考えてあげるべきだし、自分の仕事くらい自分の力で何とか頑張るべきだね。もちろん、夫婦なら支え合うべきだが、それは妻にいつも一緒にいてもらって自分のやることなすこと全てを手伝ってもらうということではないはずだ」

僕「たしかに」

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