教授と僕の研究人生相談所



第70回(更新日:2017年2月20日)

教授職の人間は研究の細かいところはわからんよ 1ページ目/全2ページ

僕「これ、1年前に頂いた相談なのですが・・・(相談メールを印刷した用紙を渡す)」

教授「長いな」

僕「え、えぇ・・・」

教授「・・・(相談文を読んでいる)」

僕「・・・(教授が読み終わるのを待っている)」

教授「気のせいかな、この相談文は前にも読んだような気がするぞ」

僕「いえ、気のせいではありません。教授はこの相談文、何度も読んだと思います」

教授「何度も読んだ?何故だ?」

僕「教授はこの相談文を読むたびに『相談文が長いし、難しい問題だから今日はパス』って言ってたんです。でも、さすがに今日はお答えいただけないでしょうか」

教授「ふむ・・・(と言いながら相談文をもう一度読み直している)」

僕「・・・(教授が読み終わるのを待ってる)」

教授「長いな。しかも難しい相談だな。次回でいいか?」

僕「ダメです」

教授「この相談者は俺なんかよりはるかに優秀で、出身研究室も俺の研究室とは比較にならないくらい立派なんだぞ。そんな相談者に俺がどうこう言えるわけがあるまい」

僕「そんなことないですよ」

教授「そんなことはある。相談文の第一段落をよく読んでみろ。この相談者の出身学科はウェットな研究でCell/Nature/Scienceを目指すようなやる気まんまんの奴らが沢山いたんだぞ」

僕「そんなことは書いてありません。まあ、ニュアンスとしては合ってますけど。でも、いずれにしろすごい学科ですよね。ただ、相談者の出身研究室はCell/Nature/Scienceをバンバン出すような感じではなかったようですね」

教授「何を言ってるんだ、君は。『良くてCell/Nature/Scienceの姉妹紙に出す』と書いてあるんだぞ。謙遜を含んだ上でこの表現だ。その時点で俺とは全く別の世界に住む研究者だということががわかる」

僕「・・・わかりました。でもこの相談メールはまだ先があるんです。教授は立派な研究者ですし、この相談者は教授のアドバイスをもらいたいとのことでお便りをくれたんです。なので第二段落に進みましょう!」

教授「はいはい」

僕「やる気あります?」

教授「そりゃあもうこれ以上ないくらいにやる気に満ち溢れてるね」

僕「そうですか。では第二段落ですが、この段落では相談者の現職についての状況が説明されています」

教授「そのようだな」

僕「個人の特定に繋がる情報は明らかにできませんが、現職は研究室のスタッフ・メンバーであるものの、研究室のトップ(一般名詞での教授)ではないので、相談者には上司がいます」

教授「その上司の職位は教授だな。『レッツ・エンジョイ・老害ライフ!』と乾杯して酒を一緒に飲みたいな」

僕「意味がわかりません」

教授「ふん」

僕「相談者の上司は、ご自身ではあまり研究をしておらず、これまでは相談者の前任者の方に研究および学生の指導を任せてきたようです」

教授「耳が痛いな」

僕「で、その前任者が研究室を去るにあたり、今回の相談者を後任者として採用したわけなのですが、相談者と前任者の専門は違うようで、相談者は今の研究テーマを遂行する知識も経験もなく困っているようです」

教授「で、その上司とやらは研究には全く関与せず、といった感じなんだろ。まるで俺みたいじゃないか!やっぱり『レッツ・エンジョイ・老害ライフ!』だな」

僕「いえ、教授はそんなんではないのでご安心を。では次の第三段落に進みますね」

教授「ふん」

僕「第三段落では、そんな困った状況に陥ってしまった相談者が、どのようにして問題を先送りしているかを説明しています」

教授「『問題を先送り』とは君も意地悪な表現を使うんだな」

僕「いえ、そういうつもりはないんですが・・・」

教授「この相談者は偉いぞ。そんな状況でも独学で勉強し、自分に求められる仕事をこなせるようにと頑張ってる。しかも、色々と工夫をして論文として形に残そうとしているし、実際にそういう努力が実を結び論文を複数出しているではないか」

僕「でも、その上司の方は相談者のやってる研究内容やら何やらを理解していないようなんですよ」

教授「ふん、教授の職位に就いているような奴はそんなもんだ。だが、その上司は相談者の味方になってくれてるじゃないか」

僕「えっと、それは第三段落に書いてある『相談者が投稿した論文の査読コメントがボロクソに書かれていて、でも相談者はそのコメントは科学的に見て妥当だけど上司は研究の内容が理解できていないので、ボロクソコメントだけを見て査読者が無理解だと相談者の立場に立って怒っている』という点のことでしょうか」

教授「そうだ。それに、その上司は相談者をその研究テーマの専門家だと周りに言ってくれてるんだろ。しかも、その研究テーマは流行(はやり)の分野で、その研究室は学生からの人気もあるし、企業からの共同研究のオファーも継続的に来てるんだろ。その上司はやり手で、部下思いじゃないか」

僕「いやまあそうなんですが・・・。でも、上司は研究のことをわかってないんですよ。だから相談者は、自分の置かれた立場における周りからの目と現実とのギャップに苦しんでいるようなんです」

教授「俺からしてみたら、人気のある研究分野で、自分の上司が自分のことをその分野のエキスパートだと宣伝してくれるなんて夢のような状況だと思うがね。で相談内容は?」

僕「最後の第四段落に相談がまとめられてるんですが、今のどっち付かずの状況を打破したいようで、そのためのアドバイスを教授にいただきたいようなんです」

教授「どっち付かずの状況?」

僕「宣伝されてる内容と現実のギャップということですかね。相談者の実際の専門や知識経験が、今現在の研究テーマと離れているということに苦労しているようなので、そのギャップをどう埋めるかということで悩んでいるようです」

教授「その上司みたいに口だけで生きていけばいいんじゃないか。お手本となる人間も身近にいるんだし」

僕「またそんな適当な」

次のページへ

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.