英語の論文を整理する方法



第5回(更新日:2016年3月7日)

論文管理の方法(3):Mendeley、Readcubeで管理する

今回は、論文管理ソフトを紹介します。その中でも、無料で開始できるMendeleyとReadcubeの2つを取り上げます。

これらのソフトはアップデートを繰り返しています。その結果、説明書は長くなり、web上の情報もすぐに古くなるため、使いはじめる時に必ず苦労することと思います。そのうえ、これらのソフトには日本語サポートがありません。たとえばソフト内のメニューは全て英語表記です。英語に抵抗があると、心理的にも使うことをためらってしまいます。

しかしながら、今まで紹介したパソコンフォルダ(第3回)やEvernote(第4回)で管理するのとは異なり、論文管理ソフトには多くの長所があることも事実です。

この方法のおおまかな長所と短所をまとめました(Table 1:クリックで拡大) 。

以下、少し解説を加えます。


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■ 長所1. PDF全文検索はもちろん、その他、様々な検索が可能

文字が埋め込まれている一般的なPDFファイルでは、WindowsやMac OSに標準で搭載されている検索機能のような「PDFファイルの全文検索」ができます。これにより、欲しいキーワードを論文内に含んでいるファイルを探しやすくなりました。

その他にも、検索に便利なフィルターが備わっています。長所2にもつながるこのフィルターを用いた検索方法は非常に便利で、多種多様な使い方が可能です。


■ 長所2. 複数のプロジェクトに関わる論文でもうまく管理できる

Evernoteには「ノートブック」と「タグ」の両方のフィルターがあり、複数のプロジェクトに関わる論文でもうまく管理できました(第4回参照)。

論文管理ソフトは、このようなフィルターを自動的に複数作成します。たとえば図1の場合、論文の著者が作成した「key words」を論文管理ソフトが自動的に抽出しています。

その結果、図2のように、論文管理ソフトのkey wordフィルターで、たとえば「nitric oxide」をkey wordとして使用している論文を簡単に見つけ出すことができます。Mendeleyでは「key words」の他に、「筆者別」、「出版社別」、など多くのフィルターを有しています。Evernoteのように自分でkey wordsを割り当てることも可能ですので、複数のプロジェクトでもうまく管理できます。


図1:論文に登録されているKeywordsを論文管理ソフトが自動で抽出している。
(クリックで拡大)


図2:Author Keywordsによる検索方法を使うと、必要とする論文が簡単に抽出できる。
(クリックで拡大)


■ 長所3. 重複ファイルのダウンロードの可能性が低い

フォルダーやEvernoteによる管理の場合、ファイルに名前をつけて保存する必要がありました(第3回および第4回を参照)。その結果、同じ論文のファイルでも異なるファイル名をつけてしまうと、あたかも別の論文ファイルが存在するように見える恐れがありました。

論文管理ソフトは、ファイルの中から論文のタイトルを抽出します。つまり、1つの論文ファイルは、たとえ異なるファイル名であっても中身が同じファイルであれば、同じ論文ファイルとして認識されます。そのため重複ファイルは比較的容易に見つけ出せます。また、タイトルが抽出できないものはファイルが壊れていることもあるため、意味のないファイル(開くことのできない論文ファイルなど)がパソコンに溜まるのを防ぐ役割もあります。


■ 長所4. supplementary informationなどのファイルも管理できる

最近多くの論文で見られるようになった追加情報(Supplementary Information)も、論文管理ソフトでは容易に保存できます。論文管理ソフトでは、複数のサポート・ファイルも論文の「タイトル」に紐付けて管理してくれます。図3(下図:クリックで拡大)にその例を載せました。


■ 長所5. コメント・アンダーラインの追加が可能

この機能は、論文管理ソフトに付属されています。中でもReadCubeは、蛍光ペンを4色から選ぶことができ、きれいにまとめることができます。(下図参照)


■ 長所6. クラウド同期が可能

論文管理ソフトでは有料オプションとして提供されることが多いクラウド同期ですが、Mendeleyは、無料で2 GBまでのファイルをクラウド同期できます。1000ファイル以上の論文をクラウド同期できることでしょう。


■ 長所7. ソフト上で快適に読める

ReadCube上でPDFファイルを読むと、一部のPDFファイルはenhanced PDFという形式に変換され、著者やreference情報を少ない動作で読み込むことができるようになります。前述のアンダーライン機能も充実しているため、ソフト上で論文を快適に読めます。(下図参照)

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上記のような長所がある一方で、使用にあたり注意しておくべき点もあります。


■ 短所1. ソフトは日本語化されていない

論文管理ソフトは英語で作られています。冒頭でも述べたとおり、メニューは日本語化されていないので、英語に苦手意識があると使いにくいと感じることがあるかもしれません。また、基本的に英語ベースのソフトなので、ソフトに付随しているヘルプ機能を使ったとしても、自分が必要とする情報に辿りつくのは少し手間取るかもしれません。


■ 短所2. 機能が多く、使用方法が難しい

常にアップデートを繰り返しているということからも想像できますが、アップデートのたびに新しい機能が追加されていきます。そのため、論文管理ソフトのすべての機能を使いこなすことは簡単ではありません。Evernoteのように(第4回参照)、機能がどんどん複雑化していっているといえます。


■ 短所3. 日本語の文献管理に適していない

日本語の入力は可能なことも多いですが、論文管理ソフトは基本的に英語で使うことを想定して作られているため、日本語の文献を取り込むことはできても、活用しにくいかもしれません。たとえば、自分が英語で論文を執筆する場合、日本語の文献を引用することはできません。したがって、個人的には、日本語の論文はフォルダー管理で十分だと思います。


■ 短所4. バグも多い

アップデートのたびに、バグが修復されていきます。常にアップデートを繰り返していることから想像できることでしょう。論文管理ソフトにはバグはあるものと考えましょう。たとえば、長所2で紹介したkeywordの自動取り込み機能が、うまく機能しない論文もたくさん存在します。

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論文管理ソフトを2つ紹介し、長所を7つ解説してきましたが、その他にも使える機能はたくさんあります。特に、論文管理ソフトは論文執筆で本領発揮できるソフトです。将来、論文を執筆することを目標にするなら、いつかは使いこなしておきたい管理テクニックのひとつです。


執筆者:研究もしている医師
http://camera-research-doctor-144.tumblr.com/

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