英語の論文を整理する方法



第6回(更新日:2016年3月22日)

論文管理の方法(4):印刷して管理する

今まで論文をPDFファイルとして管理することを中心に話してきました。しかし、一昔前の研究者たちは印刷した「紙」として論文を保存してきました。紙の良さもあるはずです。PDFファイルとして論文を入手することができる今、印刷して「紙」として管理することのメリットとはなんでしょうか。

今回は、印刷して管理することについて考えてみます(Table 1:クリックで拡大) 。


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■ 長所1. 簡単

なんといっても、PDFファイルを印刷して、所定の場所に置いておくだけなので、いつでも簡単に始めることができます。


■ 長所2. 日本語の文献でもOK

文献管理ソフトによっては、日本語非対応のものもあります。しかし紙として管理するなら、日本語、英語、どのような論文でも、クリアーホルダーなどを使って管理できます。


■ 長所3. コメント・アンダーラインが多機能

この機能は、Evernoteや論文管理ソフトにも付属されています。しかしながら、論文に自由に書き込みができるというのは紙でしか味わえない大きなメリットで、無限の可能性を秘めています。たとえばお気に入りの筆記用具を使いながら論文を読み進めると、テンションが上がるかもしれません。

蛍光ペン1つ見てみても多くの色がありますし、アンダーラインも直線、波線、二重線など、好きな線を自由に引けます。筆記用具は多くの種類があり、ペン先の太さも様々。自分の好きなように論文を「彩る」ことができます。


■ 長所4. Supplementary informationなどのファイルも管理できる

最近多く見られる追加情報(Supplementary information)も、紙ベースでは容易に管理できます。本文と同じクリアーホルダーに挟んでおいたり、クリップで挟んだり、また、最近では針を使わずに紙をとじるステープラーなどもあったりします。


■ 長所5. 読みやすい

これも紙の大きなメリットです。紙を使って論文を読むのは快適です。Evernoteや論文管理ソフトによる管理は、コンピュータが中心でした。そのため、コンピュータ上で欲しい論文を探し、そのままコンピュータ上で読むことは当然可能ですが、それでも印刷して読む方が快適だと思いませんか。

最近、液晶ディスプレイは高解像度になってきています。Kindleのようなeインクを使った電子ペーパーも存在します。しかし、それでも紙の方が読みやすいと私は思っています。

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上記のような長所がある一方で、論文を印刷して管理するデメリットもあります。


■ 短所1. 散らかりやすい

紙を使うと生じる大きな問題点です。携帯電話やクレジットカードなどの領収書がペーパーレスになってきている理由のひとつが、まさしくこの「紙だと散らかるから」でしょう。紙ベースの論文を片付けずに、たとえば机の上などに放置していると、知らない間になくしてしまったり、同じ論文をもう一度印刷してしまったり、その結果、机の上が書類であふれかえってしまうという大変危険な状況に陥ってしまいます。

クリアーホルダーなどを使って適切に管理していく必要がありますが、これはとても根気のいる仕事です。また、たとえうまく管理していたとしても、論文が増えるごとにクリアーホルダーなどは増えていき、その結果、荷物は着実に増えていきます。引っ越しなどで論文を運ぶ際に苦労することになります。


■ 短所2. PDF内の文字検索ができない

コンピュータを使わないので、検索機能が使えません。コンピュータやスマートフォンで簡単になんでも検索できる時代ですから、欲しいキーワードを検索できないのはストレスとなるでしょう。


■ 短所3. 同期できない

コンピュータを使わないので、同期できません。職場で管理している論文を、たとえば自宅や通勤途中などで、読むことは不可能です。必要な論文を紙で読み始めた場合、その紙を常に持ち歩かないといけないため、なくしたり、破れたりしてしまうリスクが生じます。また、同じ論文を複数印刷して別々に書き込みをしていると、どれが最新なのか分からなくなるというリスクも起こりえます。


■ 短所4. 複数のプロジェクトに関わる論文の保管に困る

複数のプロジェクトが全く別の領域なら問題ないのですが、多少なりの関連性がある場合に生じる問題です。たとえば、「○○遺伝子」の研究をしているラボで、「○○遺伝子の疫学」「○○遺伝子の動物実験」「○○遺伝子の臨床研究」の3つのプロジェクトを進めているとします。この場合、印刷した論文をこれら3つのクリアーホルダーにそれぞれ保存すべきかどうか悩むことになります。

論文に書き込みした内容のアップデートや削除を複数の印刷物に処理する必要が生じるため、印刷物が知らない間に増殖したり、最新の書き込みがどれか分からなくなったりするおそれがあります。

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紙を上手に管理し続けることは大変です。しかし「読みやすさ」や「書き込みやすさ」は、現在のところコンピュータより優れている紙の長所だと私は思っています。また、コンピュータが苦手な人でもできる基本的な管理方法なので、人を選ぶこともありません。逆に、液晶ディスプレイで文字を読むことに違和感を覚えない人にとっては、あまりメリットがない方法かもしれません。


執筆者:研究もしている医師
http://camera-research-doctor-144.tumblr.com/

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