英語の論文を整理する方法



第8回(更新日:2016年5月9日)

まとめ

今まで論文の管理の方法、およびその長所と短所を述べてきました。今回が最終回。今日は、私がおすすめする方法を紹介します。


■ アナログとデジタルを両方利用する

最近、スマートフォンを使う人が増えてきていて、たとえばスケジュール管理は、コンピュータやスマートフォンなどのデジタルで管理しやすくなりました。その結果、昔からの「手帳」の売り上げが落ちるように思いますが、実は、手帳もよく売れているようです。

これは、デジタルとアナログ、どちらにも良い点があるということを反映しているのだと私は考えています。そこで、スケジュール管理をアナログの手帳とデジタルのコンピュータで管理するのと同じように、論文も「アナログとデジタル、両方利用して管理する」のが私のおすすめの方法です。

アナログ、すなわち、紙ベースの論文は、何と言っても読みやすいことにあります。iPadの大きな画面で本が読める時代ですが、なぜか紙の方が読みやすい、親しみやすいという方は多いのではないでしょうか。私も紙だと論文を集中して読めると思います。まず論文を紙として印刷し、好みの筆記用具を使いながら読むことをおすすめします。

私は蛍光ペンや多色ボールペンを使うのが好きです。たとえば、下の図では、引用を表す数字に橙色の蛍光ペン、略語に緑色の蛍光ペン、重要と思う箇所に黄色の蛍光ペン、書き込みは赤のボールペン、などを使っています。Figureについては、その解釈を近くのスペースに書き込んでおくのも良い方法ですね。


論文を紙で読む:多くの色を使っている例。
他に、3色ボールペンだけ使う、蛍光ペンだけ
使う、こともある。

そして、これらの紙ベースの論文を私は封筒に入れて管理しています。封筒もデザインや大きさなどいくつも種類があります。私はキングジムの封筒型クリアーホルダーに複数の論文を入れて、実験ノートや解析して印刷したデータなどと一緒に、大きめのバインダーに挟んでいます (下図)。


論文をバインダーで保存:封筒型のクリアーホルダーを使って、
実験ノートなどと一緒に管理している例。

次に、時間を作って、これらの書き込んだ紙の論文をデータに残しておきましょう。私はMendeleyを主に使っています。Mendeleyの同期が便利だからです。Mendeleyの「蛍光ペン」機能や「書き込み」機能を利用して、紙のデータをできるだけデジタル保存しています。紙のデータをデジタルに保存しなおすこの段階がもっとも苦労します。


■ 研究の内容・自分の好みに合わせた管理方法を

私は、論文の管理方法ばかりではなく、実験ノートの管理方法についても、数年来、試行錯誤してきました。当初は、デジタルで全て保存していました。たとえば、実験結果はWordやPowerpointなどで作成し、コンピュータに保存していました。もちろん、論文もコンピュータに保存していました。

同じような実験を繰り返す場合、デジタルデータだとコピー・アンド・ペーストができて楽だと思っていたのですが、いざ実験を重ねていくと、毎回、微妙にプロトコール通りに進まなかったり、意図しないイベントが発生したりするのですよね。やがて、このような微妙な変化をデジタルで保存するのはとてもむずかしい、大変だと思うようになってきたのです。アナログの良さを実感したのです。

それ以来、私は実験を紙ベースで保存するように変更しました。得られた結果を印刷してノートに貼ったり、毎回のプロトコールをコンピュータで打ち出すのではなく、手書きで管理し始めました。そして、論文も印刷して読み、これらの実験に関するデータを全て1つのバインダーに保存するように変更したのです。まるで日記を読み返すかのように、視認性が良く、過去のデータを振り返りやすくなったと思います。

しかし、引っ越しが大変であったり、机の周りが片付かないという現実もあり、デジタルを再度導入し始めました。

試行錯誤は、今後も続いていくのだと思います。

***

研究の内容によって、データを紙で保存すべきか、デジタルデータとして保存すべきか、一長一短があるものと思います。コンピュータが好き、文具が好き、などの好みもあるでしょう。それらを踏まえて、ぜひ自分にとっての最適な管理方法を見つけてみてください。その際、今回の特集が皆さまの助けになることができたら幸いです。


執筆者:研究もしている医師
http://camera-research-doctor-144.tumblr.com/

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