■TAKAKOの文献紹介
第4回:JNKとミトコンドリア〜ACS Chemical Biology誌から(2011年6月9日更新)
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見習いサイエンスライターのTAKAKOです!6月は祝日もなく梅雨でじめじめして大変です。「6月」を「5月パート2」に変えて、2ndゴールデンウィークを作れば、きっとノーベル平和賞がもらえると思います。
・・・というようなことを研究室のメンバーとのランチのときに話したら、研究室に配属になったばかりのM君に「そんなことはないですよ(真顔)」と一蹴されてしまい、その場のムードが外の天気並みにじめっとしたものになってしまいました。彼が研究室のセミナーで発表するときは、厳しい質問攻めにしていじめてあげようと心に誓った出来事でした。
さて、本日ご紹介する論文は、ACS Chemical Biology誌に発表された「Selective Inhibition of Mitochondrial JNK Signaling Achieved Using Peptide Mimicry of the Sab Kinase Interacting Motif-1 (KIM1).(Chambers JW著:PMID: 21563797)」です。
この論文の主役はJNKです。JNKは細胞内の情報伝達を担う主要な分子の一つで、この分子が活性化するとアポトーシスなど細胞障害を引き起こすことが知られています。しかし一方で、この分子は細胞増殖も制御することが報告されています。一般に、JNKは細胞にとって良くないこと(細胞死など)に関わると考えられてきていましたが、細胞内におけるJNKの役割は実はかなり複雑なようです。
最近の研究から、JNKは活性化されると核に移行するだけでなく、ミトコンドリアの中にも移動することがわかってきました。で、ミトコンドリアの中に移行したJNKはアポトーシスを引き起こすシグナルを活性化することが報告されてきています。今回の論文は、JNKがミトコンドリアに移動するのを防ぐ薬剤(ペプチド)を開発したというものです。面白いことに、この薬剤はJNKが核へ移行するのには影響をしないようで、ミトコンドリア内での働きを介したアポトーシスのみを選択的に阻害するために新しい医薬品へとなりうる可能性を秘めているようです。
という感じで、今回は専門用語使いまくりのわかりにくい文献紹介となってしまいました。ごめんさい。ちなみに、JNKの読み方は「ジェイ・エヌ・ケー」派と「ジャンク」派に分かれるようです。私はジェイ・エヌ・ケー派なのですが、研究室でジェイ・エヌ・ケーと発音したら、「アメリカでは普通ジャンクって言うんだよ」と国外に出たことのない先輩に鼻で笑われてしまいました。研究室って本当に不思議なところですね!
それではまた次回の文献紹介でお会いしましょう。