■TAKAKOの文献紹介
第10回:あンた、背中が透けてるぜ 〜Nature Medicine誌から(2012年2月6日更新)
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2012年になって最初の「TAKAKOの文献紹介」です!皆さん、新年明けましておめでと・・・え、もう2月?
こんにちはTAKAKOです。夢はサイエンスライターです。ライターのお仕事は、定期的かつ継続的に文章を書き続けることが大事だと尊敬しているライターさんのコラムで読んだことがあります。サイエンスライターになる道は険しいです。でも、そんな困難にもめげずに今年も夢に向かって頑張ろうと思います。え、本業の研究は頑張らないのか、ですって?ははは、あんなもの飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。
・・・一般の人にはわからないネタで新年最初の挨拶をしてしまってすみません。さて、本日ご紹介する論文は、Nature Medicine誌に掲載された「Three-dimensional imaging of the unsectioned adult spinal cord to assess axon regeneration and glial responses after injury(PMID: 22198277)」です。この論文、一言でまとめると「障害後の脊髄における軸索再生とグリア細胞の反応を3次元で画像化した」ということになります。
ご存知のように脊髄は背骨の中にあります。そこには神経軸索というながーい神経の“足(手?)”が走っていて脳と各臓器との情報のやりとりを仲介しています。脊髄が損傷すると軸索がダメージを受けて、情報のやりとりが出来ず色々な神経症状(手足が動かない等)が出てしまいます。ですが、我々の体にはある程度の修復機能が備わっていて、損傷した軸索も(多少は)自然と回復します。また、障害および回復には周囲のグリア細胞も関わっていることが知られています。
これまでは、そういった軸索回復や周囲のグリア細胞の反応は、回収した組織を薄く切って(切片組織を準備して)観察することが主流でした。というか、そういった手段しか取れませんでした。ですが、軸索のような長いものは、切片でブチブチ切断したものを観察しても全体像を把握することが難しいです。そのため、切片を作らない状態で3次元での画像化に成功したということは、脊髄損傷後の体内での障害および回復のメカニズムをより深く理解することに役立つと思われます。
今回の画像化に際して特に注目すべき点は、組織を薬剤で透明化し組織の深部を光学顕微鏡で観察したということにあると思います。普通の組織は当然のように透明ではないので光をそれほど通過しません。そのため、これまでの光学顕微鏡を用いた研究では薄い切片を作成する必要がありました。
そういえば最近、私はラボでの存在意義がなくなりつつあるようで、どうも空気扱いされているような気がしています。もしかして、今の私は二光子顕微鏡などを使って体内の3次元画像を容易に作成できるのではないでしょうか?
という感じで、新年一回目の更新を終わりにします。ちなみに、本日のタイトルにある「あンた、背中が透(す)けてるぜ」は、「哭きの竜 」という昔の麻雀漫画の有名な台詞である「あンた、背中が煤(すす)けてるぜ」をもじったものです。年末年始に実家に帰って何となく居心地が悪かったので(実家でも空気扱い!)、父親の書棚にあったこの漫画を読んで現実逃避をしてました。「透ける」と「煤ける」は同じ意味だと思っていたのですが、この文章を書いているときに辞書を引いたら全く違う意味でした。何と言うことでしょう!(大改造!!劇的ビフォーアフター風に)。ということで、挨拶からオチまで中途半端な文章になってしまいました。最近は世知辛い世の中になりましたね(主に私にとって)。ではまた次回。