Nature/Scienceのニュース記事から



第85回(2015年8月5日更新)

論文を自主的に撤回後、研究をやり直して再発表

発表した論文を自らいったん撤回した研究グループが、改めて研究をやり直して再度発表した。内容は、コメの免疫応答の引き金となるタンパク質の発見についてである。

カリフォルニア大学デイヴィス校のPamela Ronaldのグループは、1995年にコメのXA21という受容体が、病原細菌の感染からコメを守る働きをしているという研究結果をScience誌に発表した。その後、細菌が持つAx21というタンパク質がコメのXA21受容体に結合することでコメの免疫応答が引き起こされるとして、2009年にScience誌に、2011年にPLoS One誌に論文を発表した。

しかし、これら2報の論文(2009年と2011年のもの)は、2013年にRonaldによって自主的に撤回された。2012年に新しくチームに加わったポスドク2人(Rory PruittとBenjamin Schwessinger)が、Ax21が免疫応答を引き起こすという結果を再現できなかったためだ。その後、間違いの原因は細菌の株の表示間違いと免疫活性試験の信頼性に問題があったことだとわかった。問題点を明らかにし、研究業界に情報を伝え、自ら論文を撤回したという行動は、業界から賞賛された。

このほどRonaldの研究グループから改めて発表された論文によれば、コメの免疫応答を引き起こすのはRaxXという新規タンパク質のようである。RaxXは細菌が持つタンパク質で、これがコメのXA21に結合することでコメの免疫応答を引き起こしてコメを感染から守る。

RaxXが欠損した細菌はコメの免疫応答を回避できるが、RaxXをこの細菌に再び戻すとXA21を介した免疫を回避できなくなった。また、精製したRaxXタンパク質のみでもコメの免疫応答を引き起こすことができることも確認した。RaxXは、コメ以外にも8つの農作物に感染する病原細菌にも存在することもわかり、これら細菌に対して耐性のある農作物の開発に役立つと考えられる。

Ronaldは、この論文は自分のキャリアの中で最も重要なものだという。それは、大きな間違いが正されたからというだけでなく、彼女がずっと探し続けてきた、植物と微生物のコミュニケーションを証明できたからだ。

論文撤回以来、Ronaldの研究室では、新しい実験系については論文発表の前に3人の研究者が独立に確認しなくてはならないことにしている。さらに電子ノートが導入され、研究室のメンバーが研究室を去った後でも、データが簡単に見つけられるようにしている。

しかし、論文撤回の痛手はなかなか消えないようだ。今回の論文の査読者の1人が「今回は細菌株の取り違えがないという保証はどこにあるのか?」とコメントしたとRonaldは明かしている。そのコメントに対して彼女らは、様々な変異体を使って、結果が確かなものだと確認したと強調した。

誰でも間違えることはあり、必要なのはそれらの間違いをきちんと正すことだ。論文撤回は必ずしも悪いことではなく、今回のRonaldの論文撤回から再発表という流れは、この業界の研究者からは概ね賞賛を受けている。

http://www.nature.com/news/rice-researchers-redress-retraction-1.18055

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