Nature/Scienceのニュース記事から



第93回(2015年11月30日更新)

アメリカで遺伝子組み換えサケが食用に認可される

アメリカのFDAが、成長の速いサケを食用の遺伝子組み換え動物として初めて認可した。

この遺伝子組み換えサケを開発したのはマサチューセッツにあるAquaBounty technologies社。成長ホルモンの産生を高めることで、成魚となるのに通常は3年かかるところを18ヶ月に短縮した。これにより、収穫量1キロあたりに必要な飼育にかかるコスト(餌や設備の運営)を低下できたことになる。さらに、天然サケの過剰な捕獲による減少を和らげる効果もあると考えられる。

このような遺伝子組み換え動物作製技術を推進する人々からは、このサケが認可されたことで他の遺伝子組み換え動物の作製にも追い風となるとして歓迎している。一方で、環境や食の安全を主張するグループからは反対の声も根強い。

反対派は遺伝子組み換えサケが養殖場から逃げ出して自然のサケと混ざり合うことにより生態系が変わってしまう危険性を指摘している。また、多くの人が販売の際に遺伝子組み換えサケであると表示して欲しいと希望しているにもかかわらず、表示する義務がないのは問題だとして批判している。

FDAはこの遺伝子組み換えサケの食品安全性審査を2010年に終了し、環境への影響についての文書を2012年に発表している。にもかかわらずこれまで認可されなかったことで、政治的介入があったのではないかと噂されていた。しかし、FDAのアナリストは、認可に時間がかかったのは、これが初めての食用遺伝子組み換え動物だったからだとしている。また、決定の前に一般からの問い合わせやコメントにも対応する必要があった。

他の遺伝子組み換え動物が申請されているかどうかについてはFDAは回答を拒否している。さらに、CRISPRなどの新しいゲノム編集技術を用いて作製された動物をFDAがどう扱うかも現時点ではまだわかっていない。

http://www.nature.com/news/salmon-is-first-transgenic-animal-to-win-us-approval-for-food-1.18838

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