Nature/Scienceのニュース記事から



第96回(2016年1月20日更新)

エボラ生還者からの輸血療法の有効性示されず

ギニアのエボラ治療センターで、エボラ出血熱に罹患し治癒した人の血液から得られた血漿を患者に輸血して生存率が上がるかどうかを検討する治験が行われた。その結果が、2016年1月7日付でNew England Journal of Medicine上で発表された。

治験開始前の5ヶ月間に同センターで通常の処置を受けた対照群のエボラ患者では死亡率が37.8%であったのに対し、エボラ治癒患者から血漿の輸血を受けた患者では死亡率が31%と有意な差はなかった。

ただし、この治験の意義は大きい。まず第一に、この治療法の安全性が確認された。さらに、乳児と妊婦では非常に高い生存率が示された。特に乳児では、対照群で23例中15例が死亡したのに対し、輸血群では5人中1人が死亡したのみであった。ただし、例数が少なかったため有意性は確認できなかった。

有効性が見られなかった原因が、投与された血漿の抗体価が低かったことである可能性もあるため、使用された血漿はフランスの研究施設に輸送され抗体価が測定される予定となっている(現地の設備不足のため、投与された血漿中の抗体価を事前に調べることはできなかった)。もし抗体価と生存率に相関があれば、将来的には濃縮した血漿を輸血したり、輸血する血漿の量を増やすなどの対応も可能となるだろう。

回復期血漿の投与は、感染症の治療に古くから使用されてきた方法であるが、抗生物質の開発に伴い廃れてきた。しかし、感染症の大流行時においては多数のドナーが確保でき、迅速で容易にスケールアップ可能な治療法となりうる。

シエラレオネとギニアでは既にエボラ流行は終息しており、残るリベリアでこれ以上新規患者が報告されなければ1月14日には世界保健機構(WHO)が西アフリカのエボラ感染終息を宣言する予定である。今回の治験で集められた血漿は抗体価を測定した上で、次の流行時にすぐ使用できるよう保存される。

http://www.nature.com/news/trial-of-blood-based-ebola-therapy-disappoints-1.19125

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