Nature/Scienceのニュース記事から



第98回(2017年1月7日更新)

世界のトップ棋士らを打ち負かした謎の棋士の正体が明かされる

昨年12月にインターネット上の囲碁フォーラムで、世界のトップ棋士を次々と破った謎の棋士の正体がこのほど判明した。グーグル傘下の人工知能(AI)会社DeepMindが作った人工知能AlphaGoの改良版である。

この謎の棋士Master(P)は、匿名棋士として、昨年12月後半ごろに、現在の世界一の棋士である19歳のKe Jieを含む世界のトップ棋士達を、オンラインでの対戦で次々と破って注目されていた。囲碁は、これまでに開発されたボードゲームの中で最も複雑なもので、コンピューターが人に勝つのは難しいとされていた。しかし昨年、AlphaGoが登場し、人間のプロ棋士Fan Huiを初めて破り、そして世界的棋士であるLee Sedolをも破り、囲碁界を驚かせた。

Master(P)が現れた時、多くの棋士達はMaster(P)もおそらく人工知能だろうと考えた。Mater(P)はどこからともなく現れて、2つの別々のオンラインプラットフォームで何十もの短い対戦で連続して勝利したのだ。そして1月4日に、Google傘下のDeepMind社がTwitterで、Master(P)はAlphaGoの新規プロトタイプ版であると明らかにした。非公式の対戦でこの新規プロトタイプを試した結果を見て、この人工知能の革新的な動きから囲碁界が学べることに興奮していると、DeepMind社のCEOは述べている。

Mater(P)はTygemおよびFoxGoのオンラインサーバーで50以上の対戦をし、1つを除いた全ての対戦で勝利した。勝てなかった1つは、対戦相手のネット接続が時間切れのため引き分けとなったものである。DeepMindによる発表前に、イギリスの棋士Jon Diamondは、これは非常に素晴らしい成績だと述べている。Master(P)に負けた中国のプロ棋士Gu Liは、この謎の棋士に勝った人間に10万元(US$14,400)の賞金を出すとした。

DeepMind社は、AlphaGoの新規版が公式なルールの元での囲碁の対戦を今年中に行うと伝えている。オンライン対戦は通常、指し手のペースが早く、人よりコンピューターに有利とされている。それでも、オンライン対戦での強さは、指し手が塾考する時間が確保できる公式のトーナメントでの強さとも相関するだろうとの予測がある。しかし、より知名度の高いオフラインでの囲碁トーナメントは、オンラインフォーラムとはルールが異なるため、AI棋士がどれほどの強さを発揮できるかは不明だ。

これまでにAI棋士AlphaGoは十数回しか対戦していない。それに対して、今回の改良版AI棋士はオープンな対戦をより多くしているため、人間の棋士たちにとってその動きをより研究しやすい状況にある。イギリスの棋士Niall Cardinは、これらの対戦を見て研究できるということは素晴らしいと思うし、実際にこれまでになり驚くべき動きがたくさんあった、と話している。

http://www.nature.com/news/google-reveals-secret-test-of-ai-bot-to-beat-top-go-players-1.21253

*2017年1月10日追記:記事中の誤りを訂正しました
 (「50以上の対戦をし、49の対戦で勝利した」→「50以上の対戦をし、1つを除いた全ての対戦で勝利した」)

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.