研究者の声:オピニオン



2015年1月26日更新

研究費の申請をする前に注意しておくべき7つのこと

どんなに素晴らしいアイデアがあっても、それを実行するためには相応の費用が必要となります。そのため、研究費の申請書を準備・提出することは、研究者に取って最も大事な仕事の一つとなります。

アメリカのNIH(National Institutes of Health)やNSF(National Science Foundation)などは、研究者のアイデアを実行させるため、多くの研究費を用意しています。しかし一方で、研究費の申請書の審査は非常に厳しいものとなっており、多くの研究者が申請書類の作成に苦労しています。

NIHはNSFなど多額の研究費を提供する団体は、その多くがレビューアー(査読者)として同分野の研究者を選出しています。レビューアー達は、申請書に記載された研究内容が、意味のあるものか、実行可能であるか、などを詳細に議論し、どの研究に資金を提供すべきかを決定します。

研究費申請書のスコア付けの一般的な方法は、各団体のホームページなどで公開されています。しかし、各レビューアーが申請書のどこに着目して議論しているかなどは、あまり公にはなっていません。

そこで本記事では、NIHやNSFでレビューアーをした経験のある方の意見を総合し、研究費の申請をする前に注意しておくべき7つのことをまとめました。


1. レビューアー達は、審査する書類に記載されている研究内容が、提出先の団体が着目している目的の範囲内であるかをまず確認します。そのため、研究費の申請書を用意する前に、自分の研究内容が各団体が提供する研究費プログラムのどのカテゴリに適しているかを注意深く確認する必要があります。また、時には申請書類を審査する部署の担当者に直接連絡をして、自らの研究内容がどの研究費プログラムのカテゴリに合致するかを相談することも効果的です。


2. 研究費申請書の概要(Abstract)の項目は非常に重要です。レビューアーがその項目を読んでもあまり興味を惹かれなかったとしたら、おそらくそのレビューアーは申請書類の残りの箇所は好意的には読まず、あまり良いスコアをつけてくれません。申請書類を書いている際、この研究をする必要がなぜあるのかを何度も繰り返し考え、理解しやすい平易な表現で概要を記載し、自らのアイデアを売り込む必要があります。


3. 申請書類を書いている研究者本人が、その研究内容を心から重要だと思っていないと、レビューアーにはその熱意は伝わりにくいでしょう。例えば、申請書類のあちこちに同じ文章がコピペされていたとしたら、レビューアーは申請者があまり真面目に申請書類の作成に取り組まなかったと思うかもしれません。また、ケアレスミスがあちこちにあった場合も、レビューアーの興味を消失させる原因となります。自らの研究アイデアに愛着があり、それを形にしたいと真摯に思えば、申請書類に記載した一文一文に注意を払うようになると思われます。


4. 目的(Aim)と仮説(Hypothesis)は非常に重要です。それらが曖昧であれば、その申請書自体が意味のないものとなってしまいます。レビューアーは、申請書類を読むときに、目的と仮説を特に注意深く精査し、提案された研究内容が意味のあるものであるかを判断します。申請書類を作成するときは、目的と仮説の内容は常に気を配り、必要に応じて周囲の研究者の意見を聞いてみましょう。


5. 目的/仮説と、それを証明するために行う実験がクリアに結びついている必要があります。その実験をすることで、どのような結果が想定され、そして何故それが目的/仮説を証明することになるのかを明確に記載しなければいけません。また、仮に想定されなかったような結果が出た場合に、どのような対処をするかも具体的に記しておく必要があります。


6. レビューアー達は、提案された実験内容が現実的なものであるか議論することを求められています。そのため、良いスコアをつけてもらうためには、申請書類に記載された実験内容が遂行可能であるとレビューアーに納得させる必要があります。また、あまりに多くの実験を詰め込みすぎると、実現可能性が低いとレビューアーが感じる原因となるので注意が必要です。


7. レビューアーからの批判的なコメントを、個人攻撃/人格否定と受け取るのは避けましょう。自分の研究アイデアに否定的なことを言われるのは気分が落ち込むものだとは思います。しかし、レビューアー達は決して意味もなく否定的なコメントをしているのではありません。むしろ、申請者が気づかなかったポイントを指摘してくれているので、その欠点を克服するたびに、自らの研究アイデアがブラッシュアップされると前向きに捉えましょう。

日本とアメリカでは研究費の申請書類の審査に違いがあります。しかし、一般にアメリカでの審査の方が厳しいため、上記の点は、日本で研究費の申請書類を準備するためにも役立つかもしれません。


執筆者:樋口恭介(サイエンスライター)

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