研究者の声:オピニオン
Tweet2015年5月27日更新
研究環境改善のカギは「透明性」だ!
成果をあげた研究者には大型予算を、研究者は実力の世界だ、競争上等!というムードで突っ走ってきたライフサイエンス分野ですが、相次いで大型の研究不正事件が発覚したことを通じて、研究者のみならず、広く社会に「ライフサイエンス領域は大丈夫なのか?」という疑念を与えてしまいました。
研究そのものの不正を減らす努力をするのが必要なのはもちろんですが、苦労して競争して論文を出しても、その後の研究費や人事の審査がコネや出来レースでは、研究で競争をする意味がありません!
こうしたことは、みんなおかしいと思っているのに、なぜかあまり改善しません。居酒屋での議論は活発でも、公の場では意見を述べない研究者。どうすれば状況を改善できるでしょうか。
そこで、「透明性」を解決のキーワードとして考えてみました。「透明性」を上げることを通じて、こうした課題が解決できるのではないでしょうか?
その1:
研究費の審査についてはいろいろな噂が飛び交っていますが、さて実際にはどうなのでしょうか?審査のプロセスはもう少しオープンでも良いのではないでしょうか。
(提案)
・審査会の議事録を、発言者を匿名にして公開する。
・日本学術振興会が蓄積している審査委員のメタ評価を公開する。
・科研費における評価制度を他の大型研究費審査に採用する。
・年間審査回数の制限(審査活動もエフォート管理)。
その2:
若手には重要な問題である人事評価。こちらも激戦が続いていますが、納得がいかないという声もよく耳にします。何を透明化すれば、応募者は納得できるでしょう。
(提案)
・研究機関の人事の透明性について部局ごとに評価を行い、これを公開する。指標は統一し、自校出身者の比率、内部昇進の比率、非公募人事の比率などを一定期間で集計する。全国でランキングを作成。
・どのような人材を求めているかを応募要領に詳しく説明し、公開した観点に基づいた議論を通じて選考する。
この他にも、ここを透明化すべきだ、どうしてここは秘密になっているのか?いや、この部分はさすがに透明化できない、などといった忌憚のない議論をお願いします。
個人的な経験ですが、尋ねてみたらあっさり開示されるといったケースもままあります。そういったご存知の情報も是非! コメントお待ちしております。
執筆者:岡山大学 田中智之
(この意見は筆者が所属する組織の意見を反映しているものではありません)
*本記事は日本分子生物学会の『日本の科学を考える』より許可を得て転載させていただきました。転載元のページにはコメント欄もあり、本記事の内容に関して様々な議論が行われています。