研究こぼれ話
Tweet2012年2月11日
書評 - 研究者マンガ「ハカセといふ生物」
「博士道」の実験太朗先生・立花美月先生のデビュー作である研究者漫画「ハカセといふ生物」を両先生より送っていただきました。手にとった最初の印象は、「綺麗」そして「分厚い」、でした。ウェブ上の4コマ漫画に大量の書き下ろし漫画が加わったと聞いていたのですが、これほどボリュームのある本だとは思っていなかったので驚きました。
表紙は爽やかな青字のタイトルとともに、主役のハカセこと北大路柿生とヒメこと姫杜冴子、そしてペットのハマジ(ネコ)のイラストが描かれています。注目すべきはやはりハカセの“装備”にあるでしょう。左手にピペットマン、右手にファルコンチューブ、そしてマントのように羽織った白衣。まさに博士研究者の正装とも言うべき格好です。そして、個人的に気になったのは両足に装備されている“サンダル”。研究者の見た目をここまで的確にイラストに落とし込めるのは、ハカセの深い洞察力とヒメの冷静な観察眼が合わさった結果にあるのではないでしょうか。
さて、気になる中身ですが、全ページがフルカラーとなっています。そして、最初のページはまるで学位論文の表紙のようなレイアウトです。これを見て、学生の皆さんは自分がこれから書くであろう学位論文を想像し、大学を卒業して研究者として働いている人は学生時代の様々な出来事が思い出されるのではないでしょうか。
本編は、第一章(日常を中心としたハカセの行動)・第二章(研究所等におけるハカセの行動)・第三章(学会におけるハカセの行動)の三部構成となっています。ハカセとヒメの出会いからハカセの日常や研究風景、そしてハカセの学会での勇姿など盛りだくさんです。全ての4コマ漫画は、研究者でなければ知りうることのない出来事を忠実に再現しています。生物学系の実験をしている(していた)人であれば、掲載されている4コマ漫画の内容に強く共感するものと思われます。
そして、この漫画の凄いところは、そういった研究者に関するマニアックなネタを、一般の人が読んでも理解できる形で表現しているところです。そのため、研究の世界に入ったばかりの学生や、研究者ではないけれど研究業界に興味のある人にとっても充分に楽しめる内容となっています。
この本はさらに、ミニ・コラムや巻末の読み切り短編漫画、そしてなんとカバーの裏面まで、本編の4コマ漫画以外にも読み応えのあるコンテンツが満載です。
ところで、これは私個人にとって特に楽しめたポイントだったのですが、4コマ漫画のところどころに人気アニメ・コミックのネタが盛り込まれています。例えば、ガンダム世代の人であれば誰でも知っているあの名シーンがハカセら登場人物達で見事に再現されています(もちろん、そういった元ネタを知らなくても楽しめますのでご安心を)。ちなみにそのシーンとは、ガンダムが黒いモビルスーツの頭を踏みながら別のモビルスーツを斬りつけるところです。まさかビームサーベルが博士研究者の必需品である「あれ」で代用されているとは・・・。
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全てのイラストがフルカラーで細部まで書き込んであるので、何度読んでも楽しめます。実際、私は既に5回くらい読んだのですが、読む度に新たな発見があり全く飽きることがありません。本当に素晴らしい本だと思います。研究の世界にいる人や研究業界に興味のある人は、ぜひ手にとって読んでみてください。
執筆者:BioMedサーカス.com