研究こぼれ話



2013年1月10日

昔懐かしの白木屋コピペをポスドク風に改変してみました


なあ、お前と飲むときはいつも白○屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺が貧乏な修士課程の学生で、お前が学振DC1に内定したとき、
おごってもらったのが白木屋だったな。

「俺は、将来はアメリカでラボを持とうと思うんだ。学振通ったからスタートはまあまあかな」
お前はそういって笑ってたっけな。

俺が修士課程を終えて入社して働いてると言ったとき、
お前は会社の研究も面白そうだけど俺はやっぱり自分の名前で論文を出したいんだって言ってたな。

「土日祝日も休みじゃないけど、世界にいるライバルのことを思うと休みたいと思わないよ」
「研究室の後輩たちに実験を教えたりしないといけないんだ、ゼロから教えるから大変なんだよ」
「研究室の先生たちからも、期待されてるみたいだからプレッシャーだよ」

そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。

あれから十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。

なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を
いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?

でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、
俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。

お前が留学中に精神を病んだって聞いたよ。お前が論文を数年出してないのも知ってたよ。
昔の教授のコネで何とか入った研究室で、一回りも歳の違う、20代の若い学生の中に混じって、
大腸菌をつついたりマウスの床敷を変えたり、それでも必死にポスドクを続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ白木屋で、十年前と同じ、叶う事のない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。



執筆者:白木屋コピペを初めて見てから十年

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