研究こぼれ話



2013年5月5日

海外ポスドク二年目がかかる奇病「ポス二病」の七つの症状


1. 欧米をバカにする
(解説)欧米で実際に暮らしてみて、日本からは見えなかった欧米のシステム(研究面だけでなく生活面なども含む)の洗練されてなさを痛感する。そして、それを日本にいる知り合いに得意気に語るようになる。
(例)アメリカは実力社会って言うけど、結局はコネ社会だよね、とか何かを知っているような表情で言う。


2. 日本を礼賛する
(解説)留学前は日本をバカにして欧米を褒めていたのに、なぜか逆の立場になっている。
(例)やっぱり日本のシステムは洗練されているよね。みんな真面目だし、きちんとしてるし、とか言い始める。


3. 日本のマスコミや中国/韓国を馬鹿にする
(解説)ネットに入り浸り、ネットの情報だけを鵜呑みにしはじめる。上記2の症状が酷くなると出てくる症状。
(例)日本があれだけ素晴らしいのに国際社会で活躍できないのは、中国や韓国に牛耳られた日本のマスコミのせいだ!とか力説しはじめる。


4. Corresponding Authorに異常にこだわりはじめる
(解説)First Authorは単にラボのボス(Last Author/Corresponding Authorのことが多い)の言いなりになって実験しただけなので、仮に良い雑誌にFirst Authorの論文があっても一人前の研究者としてはみなされないよね、と考えるようになる。逆に、ラボのボスになってなくても、論文のCorresponding Authorになったら、その研究は自分のものだと思ってしまう。
(例)あの人はポスドクの期間が長いけど、論文はCorresponding Authorになってるから独立したと言えるんだよ、とか(他人のことを何故か偉そうに)人に説明する。


5. ラボが自分に払うのは給料だけではないと言い始める
(解説)雇用主は雇用者に対して給料以外にも保険代などを負担しているという事実に気づいた自分の洞察力の深さに感動する。そんなのは当たり前の事実なんだけどね。
(例)俺の給料は○○だけど、実際にラボが俺のために使ってるお金は給料だけでなくBenefitsの分も含まれるから合計では□□なんだよなーとか、まるでポスドクに給料を払っているPI(ラボのボス)のように語る。


6. 日本人コミュニティに入り浸る or 距離を取る
(解説)人によって症状が異なる。ある人は病的なまでに日本人コミュニティに触れること(日本にいる人とのコンタクトも含む)を毛嫌いする。一方では、日本人コミュニティでの自分のプレゼンスを確立するために精力的に活動を開始する人もいる。ただ、最もタチが悪いのは、日本人コミュニティに入る日本人のことを馬鹿にしながらも、自分は日本人コミュニティにベッタリの人である。


7. 日本への情報発信とかを考えはじめる
(解説)研究が順調に行ってない人に頻繁に発症する。自分の留学体験やそこから得られた持論などを、インターネット(ブログ、Facebook、twitter)で偉そうに公開してしまう。症状が酷い人になると、自分のブログなどが書籍化されるかもなどと淡い期待を抱いてしまい、研究活動よりもインターネットで公開するための日本語を書いている時間の方が長くなってしまう。


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もちろん、これら症状は全てが絶対に悪いというわけではありません。次のステップに行くためには、上記のような考え方をすることが必要であることもあります。ただし、この病気をこじらせると万年ポスドクになってしまったり、研究者として間違った道に進んだり、友達をなくしたりすることがありますので注意が必要です。

まあ、「ポス二病」はハシカのようなものです。早めに罹って治しておきましょう。


執筆者:アメリカの田舎で独立ラボを持っている人間

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