海外ラボリポート
Tweet佐野晃之 博士 〜米国ニューヨーク大学から(2016年4月8日更新)
はじめに
私は、2012年3月に京都大学医学研究科医化学教室で長田重一教授のご指導のもと学位を取得し、2012年4月にアメリカ、ニューヨーク大学(NYU)Dan Littman labに留学しました。寄稿時で丸4年間ポスドクとしてアメリカで研究していることになります。
この4年という月日が、どのように私の考え方を変えていったのかを説明することで、留学を迷われている誰かの背中を押すことができればと思います。また、留学に対するデメリットも紹介したいと思います。留学は、全ての研究者にとって必ずしも明るいわけではありませんが、確実に研究者としての新しい扉を開けてくれるものだと考えています。
ラボメンバーとの写真。前列真ん中が著者、最後列右が現在のメンターDan Littman。
私が渡米した当初は、最長5年で、できれば3年ほどで日本に帰国しようと考えていました。英語が非常に苦手で、アメリカでのポスドク経験を「研究の成熟、進展」のためというよりは、英語の勉強、新しい経験としてしか捉えていなかったのだと思います。特に、昨今の日本での生命科学研究は、アメリカやヨーロッパと比べても大差ありません。いや、分野によっては日本の方が優れています。しかしながらこのような考え方は渡米後1年の間に変わっていきました。
1)縦、横の議論が活発であること
留学当初、研究室にはポスドク15人、博士課程学生2人、テクニシャン4人、ラボマネージャー1人が在籍していました。ラボミーティングだけでなく、普段から研究のディスカッションが活発で、特に驚いたのが、他の研究室とも、時間、興味があればとことんディスカッションします。
学会に参加してもその熱は冷めず、とにかくディスカッションです。特に、あの人は偉い人だからとか、学生さんのくせになど、年齢や経験による差別がなく、研究を志すものとして皆対等に議論が始まります。また、マテリアルのやり取りは非常に簡単です。こういった土壌が、科学を急激に発展させるBufferになっているのだと確信しました。
2)日々最新の科学に接することができる
私が所属している研究室と同じ階には私のメンターである Dan を含め、6人の免疫学者が在籍しています。この6人がそれぞれの異なる免疫分野で最新の研究を行っているため、問題点や自分達が不得意なことは、互いの助けを借りて解決していくというサポート体制があります。
また1週間のうち平日5日は何かしらのセミナーが開催され、免疫学だけでなく発生学や神経、脳科学といったトピックで埋め尽くされます。その中には、新進気鋭の若手研究者からノーベル賞受賞者、アメリカからヨーロッパ、アジアと様々な研究に触れることができます。