研究者インタビュー
Tweetハーバード大学医学部 荻野周史 博士(2012年01月16日更新) 1ページ目/全7ページ
癌の分子病理疫学(Molecular Pathological Epidemiology, MPE)の面白さ、と癌の個別化予防・個別化医学(Personalized Prevention and Personalized Medicine)における革新的役割について
今回、Harvard Medical SchoolのAssociate Professorとしてご活躍中の荻野周史先生に、荻野先生のご研究内容や米国での研究生活において学んだことなどをお伺いしました。
荻野先生は、病理学分野の分子遺伝病理学(Molecular Genetic Pathology)の専門医として、Brigham and Women’s Hospital (BWH)で臨床病理診断業務とDana-Farber Cancer Institute(DFCI)で新しい集学的研究分野(Multidisciplinary), Interdisciplinaryである分子病理疫学(Molecular Pathological Epidemiology, Molecular Pathologic Epidemiology, MPE)の研究にも携わられています。また一方で、Harvard Medical SchoolとHarvard School of Public Healthの教育・研修プログラムで教育に携わられています。Harvard School of Public HealthでのAssociate Professorにも就任の予定です。
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Q. 本日はどうぞ宜しくお願いいたします。はじめに、病理学を専攻した理由を教えていただけますか?
病理学(Pathology)は広い意味では、人間の病気のメカニズムを研究する学問です。“Patho”は病気を、“…logy”は学問を意味します。医学教育における立場としては、基礎医学と臨床医学の橋渡しのような役割を求められています。その広義の病理学の一分野である病理診断学は血液、組織をはじめとする患者からの臨床検体を、広義の病理学の知識と手法を駆使して解析・分析して、人間の組織・病気を診断する学問です。以上の理由から、広義の病理学と狭義の病理診断学は今日に至るまで字義どおり非常に密接な関係があります。特に癌の医療における病理診断学の役割には大きなものがあります。癌の有無、癌の組織タイプ、進行度の判定、遺伝子変異の同定、治療効果の評価、に病理診断学は欠かすことができません。私は東京大学での医学生時代の後期に病理診断学の面白さを経験してから病理医になろうと決意しました。そのときは将来アメリカに渡ることになるとは全く予想していませんでした。後に研修先を求めての面接旅行でアメリカの病院に行くまで、海外旅行すらしたことがなかったのです。