研究者の声:オピニオン



2015年6月30日更新

研究者を目指す大学生・大学院生が知っておくべき「40歳になって実感すること」


その1:体力がおちる

30歳半ばから体力がおちはじめ、40歳にもなると自分の体力のなさに呆然となる人が大半となります。学生時代は特に問題なくやっていた「徹夜」は基本的に出来なくなります。仮に無理して徹夜をしてしまうと、たった一晩の徹夜をしただけでも1週間以上も体調がすぐれないということになってしまいます。そのため40歳になると、実験などの計画をかなり綿密に立てないと研究が全く進まなくなるという事態に陥ることもあります。


その2:自分の時間を家族にとられる

40歳にもなると結婚をして家庭を持つ人が増えてきます。そして子どもが出来れば、自分の時間の少なくない部分を育児に費やさなければなりません。また、人によっては40歳前後から親の介護の問題もでてきます。

学生のうちは自分の時間は基本的に全て自分のために使えますが、40歳になると自分のために使える時間が本当に少なくなります。自分の趣味の時間はおろか、自分の勉強や研究に使う時間すらも満足に確保できないという日々が続くことは珍しくありません。


その3:新しいことに順応するのに時間がかかる

自らの衰えと反比例するように、色々な技術は驚くべきスピードで進歩していきます。時間があっても新しいことを学ぶのは大変であるのに、上で説明したように自分が自由に使える時間は年々減っていきます。そのため、きちんとした目標意識を持たないまま毎日を過ごしてしまうと、周りにあっという間においていかれてしまいます。

また、新しいことに順応するのが難しいというのは何も技術だけではありません。40歳にもなると、新しく研究業界に入ってくる若い人たちと色々な面で考え方があわなくなってしまいます。自分と考えの違う若い人たちを頭ごなしに否定してしまうと、あっという間に老害となってしまうので注意が必要です。


その4:同級生が教授になる

今はポストがなくて若い人が困っていると良く言われますが、40歳にもなると早い人では教授職に就く人もいます。しかも准教授や助教/助教授クラスであれば、40歳でそういうポジションへと昇進することはよくあります(もちろん多数派ではありませんが)。40歳でポスドクは珍しくない時代になっていますが、40歳というのは既にestablishした研究者と見なされてもおかしくない年齢なのです。


その5:研究助成金の年齢制限に引っかかる

40代の研究者はもう若手とは言い難い年齢になりつつあります。そのため40歳になると、研究助成金の中には年齢制限のため応募が出来ないものが出てきます。そうなると、同世代以上のより業績を上げている研究者達と研究助成金の獲得を争わなければいけません。

40歳になると同世代間での格差が広がり、順調にキャリアを積んできた人はより研究活動が進み、一方でキャリア構築につまづいた人は更に事態が悪くなるという負のスパイラルが始まります。


その6:恩師が引退する

年をとるのは自分だけではありません。学生時代にお世話になった恩師も年を取ります。40歳にもなると恩師が定年のため引退するということが珍しくなくなってきます。研究業界は比較的閉鎖された世界ですので、職に困ったときなどでも恩師の口利き(コネ)があれば何とかなったりすることが多々あります。しかし、恩師が引退をしてしまうと、そういう口利きも効果が薄くなってしまいます。


その7:定年まで20年以上ある

「人生は短い」と良く言われます。事実そうなのですが、その反面、40歳にもなると人生は長いと感じる人も出てきます。定年を60歳としても残り20年、定年が65歳にまで延長していれば残り25年もの間、何らかの方法で生活費を稼ぎ続けなければいけません。

40歳から定年までの時間は、単純に計算をすると、博士号を取得して「プロの研究者」になってから40歳までの倍です。しかも、その「倍の時間」は上記で述べたような様々な困難のもとで過ごさなければなりません。その20〜25年がどのような研究人生になるかは、意外と学生時代の時間の使い方や行動によって左右されるのかもしれません。


執筆者:樋口恭介(サイエンスライター)

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