医学生物学系のPh.D.研究者として企業で生き抜く方法



第6回(更新日:2012年7月19日)

目立たない博士卒社員となって企業で生きていく 2ページ目/全2ページ

会社内で異端なものとしてターゲットになりやすいのは目立つ人です。具体的には「優秀だけども周りとなじまない人」と「絶対に反撃してこない人」となります。そして、これまでの連載で何度もお伝えしてきたように、博士社員は会社では前者になりやすい状況にあります。それは、「博士」という看板が良くも悪くも目立つからです。

もともと目立つ状態なのに、言動まで目立ってしまうのは、閉ざされた村社会で長年過ごすことには向いていません。研究者というのは全てを投げ打って研究に没頭するものだ、というのは単なるおとぎ話にすぎません。実際は、自分と家族のために生活費を稼がなければならないのです。しかも、ある一時期だけ集中的に稼ぐのではなく、子どもが独立するまで、もしくは自分(および配偶者)の老後の蓄えが出来るまで、非常に長い間、継続的に収入を確保しないといけないのです。

そういった場合、研究者としてのプライドは二の次になります。一番大事なことは安定収入を確保することです。実は、安定収入を確保するということに目を向けると、日本的な会社というのは非常に良い働き場所になります。なぜならば、大した業績をあげていない時期があっても、毎月かならず一定額のお金を振り込んでくれるからです。

日本国内ではあまり目立たないこの事実は、実はワールドスタンダードの観点から行けば驚くべきことなのです。もちろん、現在では終身雇用は崩れかけてはいます。しかし、それでも博士卒社員を雇えるような企業は、これから数十年は終身雇用性は崩れないでしょう。ならば、自分の人生の基盤を確固たるものとして、「博士のプライド/研究者のプライド」の上に「安定した生活を確保する」ことに配慮しても良いのではないでしょうか。そして、そのためには「目立たない」ということが最重要課題になるのです。

次回は、「目立たない」ことで何が変わるか、「目立たない」ために心がけるべきことは何か、を紹介していこうと思います。

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執筆者:川口隆史

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