医学生物学系のPh.D.研究者として企業で生き抜く方法



第7回(更新日:2012年8月2日)

目立たない社員とは何か 2ページ目/全2ページ

それでは、目立たない社員とは何なのでしょうか。実は、この目立たない社員という定義が非常に重要なのです。異論等あるかもしれませんが、私は目立たない社員とは「上位20%〜30%にいる社員」と位置づけています。

 この「上位20%〜30%」は絶妙なポジションなのです。

 上位10%は優秀なので目立ちます。上位10%〜20%にいる人は優秀だとされる一歩手前で、何かあると上位10%と比較されたり、「上位10%に入りたいんだろう?」もしくは「その他大勢になってもいいのか?」みたいなプレッシャーを頻繁に与えられます。さらに言えば、上位10%にいる人たちよりも、実は上位10%〜20%にいる人の方が妬みなどの感情を持たれやすいのです。ここら辺の人間心理というのは不思議なものだとつくづく感じさせられます。

 逆に、上位50%〜100%(下半分)は、博士卒という肩書きがあるということを考えると“駄目すぎて目立つ”ためにお話になりません。

 上位30%〜50%というのも目立たないという点では良いのですが、下半分にいつでも落ちうる位置にいるということと、博士号を持っているというバックグラウンドを考えると、ふとしたことで目立つ恐れがあるので少し不安が残ります。以上のことから、上位20%〜30%というのは、良い意味でも悪い意味でも目立たない絶妙な位置なのです。

 しかし、考えてみると、このポジションに居続けるのは実はそんなに簡単なことではないのです。非常に幅広い能力が必要になってきます。例えば、自分を客観的に位置づける能力や、上位および下位との距離感を把握して、どういった行動をすれば今の評価を維持できるのかを正確に理解する能力などです。

 また、そういった情報を仕入れた上で、自分が上位20%〜30%に留まりつづけるための「適度な」実績をコンスタントに出さなければいけません(肩書きおよびベースの能力が低くないので、少し良い結果を出しすぎるとすぐに上位10%〜20%に入ってしまいます)。

 そう考えると、このポジションを狙ってできるのは、平易な課題を間違いなくこなすのが得意、やや難しいと思われることも“それなりに”ソツなくこなせる、多くの実験の技術・経験がある、自分の専門分野は深く理解できる一方で専門外でも浅く広い知識を持っている、ことが必要になってくることがわかります。そのため、修士卒以下の人の反論を受けるのを覚悟で敢えて言えば、こういったことこそ、現在の博士号取得者が得意なのだと思われます。

 次回は、上位20〜30%に留まり続ける方法をより深く掘り下げるとともに、この戦略が持ちうる危険性について触れてみようと思います。

前のページへ

執筆者:川口隆史

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.