医学生物学系のPh.D.研究者として企業で生き抜く方法



第7回(更新日:2012年8月2日)

目立たない社員とは何か 1ページ目/全2ページ

今回も前回に引き続き、日本的企業で生き残るため「目立たない社員になる方法」について考えていきます。

 ただし、私は何も博士卒社員に会社で目立つなと言っているわけではありません。あくまでも目的は、博士号を持っている人が会社で生き残る(= 長いスパンで見て会社にいるメリットを享受しつづける)ことにあります。

 周りの雑音に惑わされず、周りからの妬みにも近い妨害にも打ち勝ち、輝かしい業績とともに力強く昇進していく博士卒社員もいます。そういう風に(良い意味で)目立ちながら会社で生き抜いていくスタイルは格好良く、そうすることが望ましいと思う人が多いのも理解できます。

 しかし、現実はそうは甘くはないように思います。博士号を取得したからと言って、誰もが心(精神的なもの)まで強くなるとは限りません。博士卒社員でも心の病に罹る人はいます。むしろ、今までが順調だった分、打たれ弱い(逆境に弱い)人も大勢いるのではないでしょうか。

 さらに、研究が好きで好きでたまらなく、多少の雑音や妨害なんかは研究に専念していれば気にならない、という博士卒社員は悲しいことに今や少数派です。また、いわゆる研究遂行能力が高く、どこに行っても、誰と一緒にいても(周りに誰もいなくても)、安定してきちんとした業績を出せる博士卒社員も多くはありません。

 余剰ポスドクを産み出したと言われる悪名高き大学院重点化が始まってから、周りよりも少しだけ勉強ができるという人が、周りに流されて何となく博士課程まで進み博士号を取得しはじめています。そういった人は、たしかにアカデミックな研究という点では、修士卒などの人よりも優秀です。しかし、社会人としてはまだまだ未熟な点が多くあります。

 博士号は大学院の5年間を何とかこなせば取得できますが、それなりの収入と心の安定を保ったまま会社で定年まで生き残るには、30年以上もの間を会社内で何とか過ごさないといけないのです。しかも、会社で生き残るための教科書というものはありません。特に博士卒の社員が参考に出来るような類いのものは、博士卒社員というものが単にここ数年で増えたという背景もあり、ほとんど存在しないといっても過言ではありません。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回も目立たない社員になる方法に移ります。これを目指すべき人は、「終身雇用がほぼ確保されているような大会社」に勤めていて「なんとなく博士号を取得してしまった」かつ「それなりに優秀(ペーパーテストなど)」な博士卒社員と私は考えています。

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