教授と僕の研究人生相談所



第26回(更新日:2014年7月28日)

老害は消えず、ただ肥え太るのみ 1ページ目/全2ページ

僕「STAP小保方さんの学位、取り消しが回避されそうですね」

教授「どうだろうな。学長の最終判断がどうなるかはわからんが、早稲田の調査委員会の報告書を読む限りでは、彼女の学位は取り消すべきではないという感じだったな」

僕「え、教授はあの報告書を全文読んだんですか?」

教授「流し読み程度ではあるが、一通り読んだぞ」

僕「意外です。教授はもうSTAP騒動には興味ないと思っていたので、彼女の学位の問題はスルーしてると思ってました。まさか報告書まで読まれているとは想像してませんでした」

教授「彼女の学位を取り消すかどうかはSTAPとは別問題だよ。一連のSTAP騒動はオツムの弱い奴らが踊らされてるだけだが、今回の『博士号の学位に関する問題』は、今後の大学教育および博士課程のシステムに大きく関わるからね。アカデミアで研究と教育の両方に携わる身としては、この件はきちんとフォローしておかなければいけない」

僕「なるほど。さすが教授です。この連載ではいい加減な振りをすることもありますが、やっぱり教授は素晴らしいです。尊敬してます」

教授「褒めても何も出ないぞ」

僕「わかってますって。で、早稲田の調査委員が公開した報告書を読まれてどうでしたか?こんなことを言うと怒られちゃうかもしれませんが、僕はあの学位は取り消されるものだとばかり思っていたので、調査委員が取り消しを推奨しないと結論づけたのは結構驚きました」

教授「ふむ。まあ君がそう思うのも無理はない。だが、君は喜ぶべきだ」

僕「え?」

教授「君だけではない。あの報告書を読んで俺はとても嬉しかった。あの報告書は君にとっても俺にとっても歓迎すべき内容を含んでいるんだ」

僕「すみません、教授の言わんとしてることが全く見えてこないんですが」

教授「いいか、君も思っているように、彼女が早稲田に提出した学位論文は酷かった。そもそも下書きだったんだしな。いい加減なもんだよ。しかも、事が発覚してから調査委員会に提出した『完成版』にも、捏造やらパクリやら意味不明な文章やらが満載だったようだ。実際に件の調査委員会は、あの学位論文は完成版が提出されていたとしても、博士号の学位授与には値しないと報告書に明記した」

僕「はい」

教授「しかしだ。あの調査委員会は学位を取り消すべきではないと結論づけた。彼らが言うには、あの論文に含まれる不正は捏造とまでは認められないとのことで、しかも学位を取り消すことは、その人間の人生設計を崩壊することになるから、らしい。これは画期的な判断だ」

僕「何故ですか?」

教授「あの報告書内で何回か強調されていたが、早稲田は日本を代表する大学でそのレピュテーションは高い」

僕「れびゅてーしょん?」

教授「なんだ、そんな単語も知らんのか。レピュテーションはreputationと綴る。意味は、評判とかそういう意味だ。研究者同士の英語の雑談では、比較的使われる単語だからきちんと覚えておきなさい。まあ、日本語の報告書で敢えて横文字を使う必要はないと思うんだが、この報告書ではレピュテーションという表現が何回か出ていた」

僕「はあ」

教授「でだ、報告書によると早稲田はレピュテーションが高いらしい。そして、その高いレピュテーションを誇る大学の博士号は、あの程度の学位論文で取れるということが公に証明されたんだ。これは君のような出来損ないの学生にとって勇気づけられるニュースだと思わないかね?」

僕「さらっと酷いことを言っていませんか?」

教授「気のせいだ」

僕「・・・」

教授「しかもだ、一旦授与された学位は、仮にそれが不正があったものでも、本来なら学位に値しないような内容だったとしても取り消されないということも公に証明されたんだ。これはスゴいぞ。審査会での発表で意地悪をされたとしても、たかだかトータルで数時間我慢しさえすれば、一生保持できる博士号という称号が手に入るということなんだ。これは君のような出来損ないの学生にとって本当に勇気づけられるニュースだろ?」

僕「・・・やっぱり僕のこと酷く言ってませんか?」

教授「気のせいだ」

僕「・・・。あの報告書が僕にとって素晴らしい結論だったということはわかったんですが、いや本当はわかりたくないんですが、でも、それが教授にとっても素晴らしい結論だというのはどういう意味ですか?」

教授「STAP騒動については、騒ぎの中心にいる筆頭著者本人や彼女を利用した大人達に一番責任がある。まあ利用された大人もいたようだがね。しかし、早稲田の罪も軽くはないんだ。あんなのに博士号を与えてしまったというのもあるし、そもそも研究者を養成するための教育義務を完全に放棄してしまっていたからな」

僕「はい」

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