教授と僕の研究人生相談所



第62回(更新日:2016年3月14日)

本当にバイオ系研究者になんかなってもいいのか? 2ページ目/全2ページ

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教授「いや、時代だな。俺とは全く時代背景の異なる若者が世の中に出てきているのか。老兵は死なずただ利権を独占するのみ、か。じゃあ、俺はこれで失礼するよ。これからの世の中を背負って苦労する若者にアドバイスすることは俺みたいな老害にはできない。じゃ、そういうことで」

僕「仰ってる意味が全くわかりません。相談に答えてください」

教授「ふん」

僕「この相談者は教授のこれまでの発言を読んで、バイオ系研究者になるなら東大とか京大なんかの有名大学に行かなければならないと思っていたようなんです」

教授「研究者になるなら、というよりも、研究者として生きていくなら東大や京大を出てた方が楽だ。研究業界は学歴信仰の塊のような業界だからな」

僕「でも、今回の相談者は残念ながら国立大・私大ともに、上位の大学には落ちてしまいました」

教授「ま、入試なんてのは時の運ということもある。きちんと前を見てこれからも頑張ればいい」

僕「でも教授、バイオ系研究者になるのに、中堅どころの私大に行っていても大丈夫ですか?おそらく今回の相談者はそれが聞きたいんだと思います」

教授「知らんよ、そんなの。人によるとしか言えん。ただ、中堅どころの私大の出身者でも、研究者として活躍している人はいるよ」

僕「ということは、中堅どころの私大でも研究者にはなれる、と言うことですか?」

教授「まあな。だが、割合で言えば圧倒的に少ない。それに君のその結論は、日本人でも野球のメジャーリーグで活躍できますか?という質問に、メジャーリーグで活躍している日本人がいるので大丈夫です、と回答するくらいに意味がない」

僕「ぐ・・・確かに」

教授「厳しい言い方になるが、今回の相談者ははっきり言って研究業界の何もわかっていない。ま、そんなのは18とか19の若造がわかるようなものでもないがね。おそらく相談者は偏ったイメージでしかバイオ系研究者というものを理解していないんだろう。だからこそ、俺みたいな老害教授の発言を聞いて、バイオ系研究者になるなら一流大学へなんて単純な思考しかできないんだ」

僕「この連載を読んできてくれた大事な読者に、そんなダメ出しをしないでください・・・」

教授「この相談者が博士課程を修了するのは10年先だろ?そんな時代の研究者や研究業界がどうかなんて誰にもわからんよ。今持っているイメージでバイオ系研究者になりたいなんて危険すぎるね。巷に溢れている余剰万年ポスドクの一員になるのがオチだ。そもそも10年先なんてバイオ系研究者というカテゴリーすらなくなってるかもしれんぞ」

僕「え、そんな・・・」

教授「未来のことなんて誰にもわからん。だからこそ、今きちんと勉強をして、世の中が変化しても生きていけるように準備しなければいけないんだ。ま、今回の相談者は視野が狭いんだよ。研究者になるにしろ、ならないにしろ、きちんと大学に行って勉強すればいい」

僕「中堅どころの私大でも勉強できますか?」

教授「君は随分と失礼な発言をするんだな、中堅私大をバカにするとはな。君も偉くなったもんだ」

僕「え、あ、そういう意味では・・・。すみません」

教授「一流と言われる大学でも中堅私大でも、本人に学ぶ気があれば問題なく学べる。両者で違うのは、そこにいる学生の質と世間からの目だ。中堅私大にいっても、目標なり目的をしっかりと持って勉強すればいい。そして、周りのくだらん学生に惑わされず、世間からの冷たい目にも負けないような強い心を身につけるんだな。そういう強い心はきっと将来役に立つ。一流大学出身、特に男性だな、にはメンタルが弱い奴が多いが、メンタルが弱いというのは社会人として致命的だ。この相談者は、大学入試で失敗したという経験を生かして、メンタルの強さも大学で身につければいい」

僕「なるほど」

教授「それに、今からバイオ系研究者になりたい、なんて自分の将来を狭めることはしない方がいいな。大学では色んな人に会って、色んなことを学ぶことができるだろう。この相談者は視野が狭い。だからこそ、自分の視野を広めるためにも、色んなことを吸収すべきだ」

僕「視野を広める、って具体的にはどうすればいいんでしょうか?」

教授「そういうのも含めて自分で勉強するんだよ。何でもかんでも他人に聞いていてはダメだ」

僕「ぐ・・・すみません」

教授「ま、とは言え視野を広くするのは難しい。とりあえず、この本でも読めばいい(カバンから一冊の本を出す)」

僕「『世界は仕事で満ちている』。なんですか、その本は?」

教授「君や今回の相談者のように、世間知らずの坊ちゃんが読むべき本だな。文章も非常に良く書かれていて、他人に読ませる文章というものを学ぶこともできる」

僕「ぜひ貸してください!」

教授「相談者に渡すつもりで持ってきたんだがな」

僕「相談者が住所を教えてくれたら、僕が読んだあとに着払いで郵送します!」

教授「・・・ま、君の好きにするがいい」

僕「ありがとうございます!では今日はこの辺で・・・」

教授「あともう一つだ」

僕「え?」

教授「あなたのことをとても愛しています」

僕「?」

教授「これからの人生もきっと辛いことが沢山あると思います。でも、その辛さをあなたと一緒に乗り越えていきたいんです」

僕「え、え、え、え、え」

教授「二人で一緒にいれば辛いことも乗り越えられるし、嬉しいことはきっと一人でいるよりずっと嬉しく感じられると思います。あなたと幸せな人生を過ごしたいんです」

僕「あのあのあの・・・」

教授「だから結婚してください」

僕「な、なんですか、それは?」

教授「プロポーズの言葉だ」

僕「だ、誰への?」

教授「こっちの相談内容への回答に決まってるだろ(プリントアウトした別の相談メールを指差しながら)」

僕「え?」

教授「これで君は2回分の原稿が書ける。ということで、しばらく君とは会わなくてすむ。やれやれ、君を目の前にして飲む酒は実にまずい。じゃ、そういういことで」

僕「・・・」

執筆者:「尊敬すべき教授」と「その愛すべき学生」

*このコーナーでは「教授」への質問を大募集しています。質問内容はinfo@biomedcircus.comまでお願いいたします(役職・学年、研究分野、性別等、差し支えない程度で教えていただければ「教授」が質問に答えやすくなると思います)。

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