Nature/Scienceのニュース記事から



第18回(2012年5月24日更新)

米国政府がアルツハイマー病の治療法開発のための計画を発表

今年のNIHのアルツハイマー病研究予算は4億4800万ドル(約358億円)である。このほど、これに5000万ドル(約40億円)が追加されることになった。

5000万ドルのうち、半分は既に、NHGRI (National Human Genome Research Institute)およびNIA (National Institute for Aging) によって研究費として配分された。これらの研究資金により、アルツハイマー病の危険因子やアルツハイマー病に対する保護的因子の発見のためのWhole-genomeおよびWhole-exome研究が行われる。

また、400万ドル(約3億2000万円)は、アルツハイマー病関連のスモールビジネスに、200万ドル(約1億6000万円)は、iPS細胞からヒトアルツハイマー病も出る細胞を作る研究に使われる。

残りは、2つの大型臨床試験に使われる。1つは、1600万ドル(約12億8000万円)で、GenentechのCrenezumabという、ベータアミロイドタンパクに対する抗体の臨床試験である。ベータアミロイドは、アルツハイマー病において脳内で蓄積して神経細胞を障害するペプチドである。コロンビアに、ベータアミロイドの産生を増やす変異を持つ家系があり、この変異は、平均44歳で軽度の認知障害を、49歳で本格的な痴呆を引き起こすものである。この家系の300人を対象に、Crenezumabの臨床試験が行われる。

もう1つはインシュリンの経鼻スプレーの臨床試験であり、790万ドル(約6億3200万円)が投じられる。インシュリン受容体は認知機能に重要だが、ベータアミロイドはこの受容体に対して阻害的に働いて、認知機能を障害する。インシュリンを脳に投与することにより、ベータアミロイドをインシュリン受容体からブロックして、認知機能を改善できることが前臨床研究で示されている。このインシュリン経鼻スプレーを軽度認知障害または初期アルツハイマー病の賢者に投与すると、実に4分の3の患者で認知機能が維持または改善した。今後、より大規模な臨床試験が行われる。

US government sets out Alzheimer's plan:Nature, 22 May 2012
 http://www.nature.com/news/us-government-sets-out-alzheimer-s-plan-1.10688

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