Nature/Scienceのニュース記事から



第20回(2012年6月4日更新)

研究者総背番号制による個々の研究者の識別システム

名前の英語でのつづりが同じの別の研究者は、これまでは論文の著者や研究費の申請者として出てきても区別がつかなかった。しかし、今年後半にOpen Researcher and Contributor ID (ORCID)という、同じ名前の研究者を区別するシステムが開始すればこのような問題は解決するだろう。このORCIDが、Nature Newsの記事 ”Scientists: your number is up” (http://www.nature.com/news/scientists-your-number-is-up-1.10740)で取り上げられている。

ORCIDは、地球上の全ての研究者に16桁の識別番号をふって、それぞれの研究成果が誰のものかわかるようにするものである。ORCIDが稼働すれば、科学の評価基準の正確さと幅が大幅に上昇して、研究の管理が大きく変わるだろう。

また、論文投稿やグラント申請の際に、これまでは膨大な量の個人情報を毎回オンラインフォームで入力する必要があったが、ORCIDが導入されれば、ORCID番号を入力するだけで、論文や引用、グラント申請、連絡先などの情報が、外部データベースから自動的に取得できるようになるだろう。

現在、280ほどの組織が、2010年に立ち上げられたORCID委員会のメンバーとなっている。NIHやその他の国立研究機関は、同様のデータベースを独自に作成を計画中であったが、これをORCIDと統合することについて審議中である。

文献計量学やデータマイニングの専門家によれば、ORCIDは複数のシステムをつなげて、研究を追跡したり、研究者同士のネットワークやそれに付随する情報を分析できる可能性を持っている点が最もすばらしいということである。個々の研究者の研究の軌跡を追うことにより、彼らの研究の興味や共同研究、そして論文発表の傾向などの変遷を見ることができるかも知れない。

しかし、このORCIDがうまく機能するためには、このデータベースに登録・利用することが世界中の研究者、研究機関、学術雑誌、研究費提供機関等にとってスタンダードにならなくてはならない。現在までのところ、多くの研究機関はORCIDについてあまりよく理解しておらず、ORCIDについて聞いたこともないところも少なからずあるという調査結果がある。

個々の研究者は今年中にORCID番号を無料で得ることができるようになる。大学や企業、その他の機関は使用料を支払う必要がある。これまでのところ運営はボランティア、57万4000ドル(約4600万円)の寄付金、および120万ドル(約9600万円)の融資により運営されている。いったん会費の徴収がうまく回り始めれば、年250万ドル(約2億円)の収入が得られるだろうと見込んでいる。ORCIDの事務局長は、研究者やその所属機関がORCIDの利点を理解すれば、ちょうどDOI (Digital Object Identifier)が論文識別のスタンダードになったのと同じように、ORCIDも研究者識別のスタンダードになるだろう、と言う。

ページトップへ戻る

Copyright(C) BioMedサーカス.com, All Rights Reserved.