Nature/Scienceのニュース記事から



第23回(2012年6月15日更新)

一定料金で論文発表し放題のジャーナルあらわる

これまでのところ学術雑誌は、読者が支払う購読料か、著者が支払う出版料(Publication fee)により運営されているものがほとんどである。しかし、最近では学術雑誌も様々なビジネスモデルが考案されており、そのうちのひとつであるPeerJについてNatureの記事で紹介されている。
http://www.nature.com/news/journal-offers-flat-fee-for-all-you-can-publish-1.10811

今月12日に立ち上げが発表されたPeerJという雑誌は、著者が1回きりの入会費を払えば、いくつでも論文を発表できるという新しいビジネスモデルを取っている(査読あり)。

PeerJでは、専用に作られたプラットフォームで出版プロセスを効率化することで出版コストを下げている。創業者は、最近までPLoS Oneの発行人だったPeter Binfieldと、研究論文共有サイトMendeleyで働いていたJason Hoytである。

現在では最大の学術雑誌をなっているPLoS Oneは、1年目(2007年)に1,000報ほどの論文を出版したが、現在は毎月2,000報ほども出版している。PeerJはこのような成長を目指しているが、PLoS Oneほどの規模はなくとも運営していけるとBinfieldは考えている。

PLoS Oneは$1,350のPublication feeを徴収しているが、PeerJでは$299の永久会員会費を支払えば無制限に投稿、出版できる。また、$199か$99で1年につき発表できる論文数に制限のあるコースも設けられている。ただし、複数の著者がいる論文の場合は全員が会員でなければならない。PeerJはベンチャーキャピタルから投資を受けて、8月に投稿受付を開始する。

PeerJは、出版コストを抑えてはいるが、各論文は科学的妥当性については査読を受ける。重要性やインパクトは審査の対象外である。他のオープンアクセスの雑誌もこのようなポリシーを取っているものが多い。査読者数を確保するために、PeerJの会員は最低年1回は査読に参加しなくてはならない。

発表する論文ごとに費用がかからないのは画期的であるが、他にも様々なビジネスモデルが試みられている。抗エネルギー物理学の分野では、研究費提供機関と図書館を含むコンソーシアムが、出版社に対して出版比を支払うことで、著者が直接支払う必要がなく、また発表された論文も無料で読むことができるようにすることを計画している。

その他のアイデアとしては論文発表料金ではなく投稿料金を課す、政府が全ての出版費用のために資金を提供する、研究資金提供機関が自身で出版インフラを持つ、などが議論されている。

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