Nature/Scienceのニュース記事から



第28回(2012年7月27日更新)

ラットの細胞から作られた人工クラゲ

ラット心臓の筋細胞とシリコンを用いて人工クラゲを作ることにハーバード大学の研究者らが成功し、Nature Biotechnologyに発表した。

作られた人工クラゲは8本の足を持ち、電場に置くとまるで本物のクラゲのように拍動して泳ぐことができる。この研究を行ったKit Parker氏は「形態はクラゲ、機能もクラゲ、でも遺伝子はラットなのです」と言う。Parker氏の研究室では、臓器を再生して薬物の試験に使用するために、ヒト心臓組織の人工モデルを作成している。今回の人工クラゲは、心筋ポンプの基本的な原理を理解するために作られた。

この研究はまず、クラゲがどうやって泳ぐのかを調べるために、幼生ミズクラゲの全ての細胞をマッピングするところから始まった。ミズクラゲは筋肉の1枚の層が中心の輪の周りと8本の足に沿ってぴったりと並んだ繊維と一緒になってできている。ミズクラゲは電気信号が筋肉の中を滑らかな波のように広がることで足を下向きに波打たせる。その動きは心臓のそれにとてもよく似ている。

ポリジメチルシロキサンのシート上でラットの心筋の単層を培養することで、これと同じ性質を持った構造が再現された。電場をかけると、筋肉が高速で収縮し、本物のクラゲのような動きが再現された。ポリジメチルシロキサンは伸縮性があるので、人口クラゲはまた元の平たい形に戻り次の収縮ができる状態となる。そのため、水の中の2つの電極の間におくと、本物のクラゲのように泳ぐことができた。

通常、人工生物というと、生物に新しい遺伝子を入れたりすることを指すが、今回の発明は動物を作り上げたという点で画期的である。この研究グループは、現在ヒト心筋細胞で人工クラゲを作ろうと考えている。彼らは、薬物スクリーニングのプラットフォームとして、このようなデザインを使うことに対する特許を申請した。

http://www.nature.com/news/artificial-jellyfish-built-from-rat-cells-1.11046

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