Nature/Scienceのニュース記事から



第36回(2012年9月20日更新)

西ナイル熱ウイルスにより腎臓病が引き起こされる可能性

今年は西ナイル熱ウイルスの感染が記録を更新する勢いだ。これまでに2,600件の感染の症例が報告されており、うち118人は死亡している。

このウイルスは蚊を媒体として感染するもので、症状は無症状(ほとんどのケースがこれに該当する)から命にかかわる脳の炎症にまで及ぶ。さらに、治癒しても麻痺や疲労感などの長期的な問題が残ることもある。このほど、さらにそれらに加えて、軽い症例においても腎臓病というもう1つの長期的負担が残るかもしれないという論文が発表された。

もしこれが本当ならば、軽い症例についてどうするのか考えなければならないが、この研究に対しては疑問の声もある。

件の論文の著者らは以前、西ナイル熱感染後の生存者25人の尿を調べ、うち5人の尿でウイルスのRNAを検出したと報告している。今回の研究では、西ナイル熱感染後の生存者139人を調べたところ、40%の慢性腎疾患の兆候が見られたとしている。

この発表に懐疑的な意見としては、この研究では対照群がおかれていない、当局による西ナイル熱生存者の尿の検査ではウイルスのRNAは検出されなかった、他の研究室で同じサンプルを調べたがウイルスのRNAは検出されなかった、などがある。

著者らは、尿中のRNAを検出するには特別な配慮が必要だと言う。1本鎖のRNAは壊れやすいため、著者らはサンプルを1時間以内で外部の研究室へ輸送して解析したために、このような発見が可能になったのだとしている。さらに、尿サンプルの電顕画像で、西ナイル熱ウイルスのようなぼんやりとした球体の集まりが細胞内に見られた(未発表)ため、著者らはこの発見に自信を強めている。尿中の別の粒子にも似たように見える場合があるという指摘もあるが、著者らは1年以内にそのような懐疑的な意見を黙らせるだけの証拠を得ることができると考えている。

今後、440人(うち半数は西ナイル熱感染歴がある)を集めて腎臓病を調べる予定である。さらに来月には、尿サンプルからウイルスを単離して増幅する試みも始めるとしている。

http://www.nature.com/news/the-hidden-threat-of-west-nile-virus-1.11436

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