Nature/Scienceのニュース記事から



第46回(2013年1月22日更新)

グアニン四重鎖が細胞内で発見される〜特異な構造の核酸が遺伝子発現を調節している可能性も

染色体上のDNAは通常は2本のDNA鎖からなる二重らせん構造である。これに対して、グアニン塩基を多く含む合成DNAを人工的に折り畳むことにより、二重らせんとは全く異なる正方形の構造を作ることができる。この「グアニン四重鎖」は生体内でも存在しうると考えられてきた。

グアニン四重鎖は、グアニン塩基を多く含む1本のDNA鎖の中の異なる位置の4つのグアニンが、特殊な水素結合によりコンパクトな正方形へと折り畳まれてできており、DNAのらせんを邪魔する働きを持つ。

このほど、グアニン四重鎖が実際に細胞内に存在すること、さらにグアニン四重鎖が重要な生物学的機能を持っている可能性があることを示した論文がNature Chemistryに発表された。

DNA鎖の端にあってDNAを保護しているテロメアという構造は、グアニンを多く含んでいるため、グアニン四重鎖を形成する有力な候補であった。実際、グアニン四重鎖に結合して安定化させる低分子化合物が、テロメアにおいてDNAを損傷させることが、癌細胞での研究で示されており、これはグアニン四重鎖がテロメアに存在するという仮説を支持するものであった。

ヒトゲノムのデータ内で、テロメア以外でグアニンを多く含む領域を検索した結果、特に発癌作用のある遺伝子の発現調節に関わるゲノム領域でもグアニン四重鎖が形成されうることが示唆されていた。

これらの示唆は事実だったようだ。今回Nature Chemistryに発表された論文では、グアニン四重鎖に特異的に強く結合する抗体が作成された。この抗体はDNA二重鎖には結合しない。この抗体を生きたヒトの細胞と一緒にインキュベートしたところ、この抗体は染色体の様々な異なる部位に結合した。これらの部位のうち約4分の1のみがテロメアであった。

これらのグアニン四重鎖が染色体のどの部位に存在するのか正確に突き止めることができれば、癌などの疾患において異常を来した遺伝子調節やその他の働きをよりよく制御するにはどうすればよいのかが明らかになる日がくるかも知れない。

http://www.nature.com/news/four-strand-dna-structure-found-in-cells-1.12253

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