Nature/Scienceのニュース記事から



第58回(2014年2月19日更新)

STAP細胞の論文で一部不自然な画像が使用されているという議論について

理化学研究所(理研)の小保方晴子博士らが2014年1月29日、細胞を弱酸性の液にさらすという非常に簡単な方法で幹細胞を作製できることをNature誌に発表して話題となった。しかしその後、同じ分野の研究者ら(インターネット上の議論なども含む)によって、Nature誌に発表された論文内で使用された画像に一部不自然な点があるという指摘がなされ、理研が現在調査を行っている。

これについてはメディアで広く取り上げられている。主なものは以下の通り。

■ Nature News:“Acid-bath stem-cell study under investigation”
http://www.nature.com/news/acid-bath-stem-cell-study-under-investigation-1.14738

■ Science Insider:“High-Profile Stem Cell Papers Under Fire”
http://news.sciencemag.org/health/2014/02/high-profile-stem-cell-papers-under-fire?rss=1

小保方博士の会見から1週間後の2月6日に、PubPeer (https://pubpeer.com/publications/24476887) という、発表された論文上のデータについてディスカッションするフォーラムにおいて、小保方博士の今回の論文のうちの1報の中の電気泳動の画像に不自然な点があるという投稿があった。5レーンのうち真ん中の1レーンだけ切り貼りしたような形跡がみられるというものである。さらにその1週間後には、論文中の蛍光を発する胎盤の写真が、同じ論文中の別の図で再度利用されているのではないかとの投稿が、同じくPubPeerになされた。

また、カリフォルニア大学デービス校医学部の幹細胞学者Paul Knoepfler博士が運営する幹細胞についてのブログに、STAP細胞の作製法の検証結果を集めて掲載するコーナー (http://www.ipscell.com/stap-new-data/) が設けられた。このコーナーで掲載された検証結果は、9件中8件がネガティブ、1件はグレーである(2014年2月18日現在)。ただし、いずれのケースでも、小保方博士が使用したのとは異なる細胞を使用している。

そして、小保方博士の博士課程時代の研究結果を発表した論文(2011年)においても、電気泳動写真の一部が反転されて同じ論文内の別の図で再利用されているのではないかという指摘もなされている。

小保方博士の今回のNatureの論文の共著者である若山照彦教授は、論文原稿作成中に理研から山梨大学に移った。今回のSTAP細胞の研究において胎盤画像のほとんどを撮影したのは若山教授である。若山教授は、現在指摘されている2つの胎盤写真が非常によく似ていることは認めている。その上で、「小保方博士には100以上の多数の画像を送ったため、単に画像を取り違えたのではないか」としている。

若山教授も当時、STAP細胞の作製がなかなか再現できず、小保方博士から直接教わって初めて再現できたのだという。しかし、山梨大学に移ってからは再現できていない。ただ、若山教授は、分化して胎盤を形成できるのは今のところ、受精卵以外ではSTAP細胞のみであるため(ES細胞やiPS細胞は胎盤を形成できない)、細胞の取り違えは考えられず、胎盤が形成されたのを若山教授が見たのだから、研究結果は本当に事実であるとしている。

共著者であるハーバード大学医学部のCharles Vacanti博士は、胎盤の写真に取り違えがあったことを認め、既にNature誌に一部の図の削除を申請している。Vacanti博士は、この取り違えは研究結果そのものを否定するものではなく、今後他の研究者たちによって同じ結果が再現できるだろう、としている。

小保方博士は現在全ての問い合わせを理研の広報部に転送しており、小保方博士本人からの疑義への回答はない。

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