Nature/Scienceのニュース記事から



第61回(2014年3月23日更新)

理化学研究所がSTAP細胞に関する疑義についての調査の中間報告を発表

理化学研究所(理研)の発生・再生科学総合研究センター(Center for Developmental Biology:CDB) のユニットリーダーである小保方晴子博士らによるSTAP細胞の論文2報について、理研が中間報告を発表した。

小保方博士らは、血液中の細胞を弱酸性の溶液に浸すことで幹細胞を誘導できることを2報の論文にまとめ、2014年1月30日にNature誌に発表し、記者会見を開いた。このようにして誘導された細胞は、STAP細胞と名付けられた。体細胞から簡単に幹細胞を誘導するこの技術は、研究上も医療上も重要であり、世界中から注目が集まった。

しかし、発表から1週間しかたたないうちに、発表内容に疑問が持ち上がり、理研が調査を開始するに至った。3月14日にその中間報告の会見が行われた。

会見では、理研理事長でありノーベル賞受賞者でもある野依良治博士が6点の疑問点に言及した。そのうち2点は「不作為のミス」であるとされた。残りの4点には、DNAの電気泳動像の切り貼りと実験方法のセクションの他の論文からの盗用が含まれるが、これらの方がより重く受け止められ、現在も調査中である。会見では、STAP細胞が実在するのかどうかについてははっきりとした回答は得られなかったが、論文の共著者のひとりである丹羽仁史博士が実験の再現を試みているという。会見では、不正行為の兆候は見られない、とされた。

CDBセンター長の竹市雅俊博士によれば、論文の著者のうち、理研の小保方、丹羽、笹井芳樹の三氏は論文を撤回することに同意しているという。しかし、2報のうち1報の論文のcorresponding authorである、ハーバード大学のCharles Vacanti教授は、画像の取り違えがあっただけで、論文の主旨は変わらないとして撤回を拒否する意向を明らかにしている。

さらに混乱を深めたのが、2011年に早稲田大学に提出された小保方博士の博士論文である。この博士論文の最初の20ページが、米国立衛生研究所(NIH)のウェブサイトの幹細胞入門からのコピーであることが、Nature Newsによって明らかにされた。また、同博士論文に使われた図のうちの1つが、研究試薬会社のウェブサイトから無断で転載されたものであることもわかった。さらにVacanti教授は、小保方博士の学位審査の審査委員として公式にリストされているにもかかわらず、「彼女の博士論文を見せられたことも、読むよう頼まれたこともない」と語った。

先週、小保方博士は早稲田大学のある教授に、学位論文を撤回したいと申し出たという。しかし、公式には撤回の申請はされていない。

2報の論文のうち1報のcorresponding authorである山梨大学の若山照彦教授は、同論文において、誘導されたSTAP細胞の多能性を証明する実験を行った。誘導されたSTAP細胞をマウス胚に注入して、それらが体中の様々な種類の細胞へと分化することを示したのである。若山教授は現在、小保方博士から受け取ったそれらの細胞を外部機関に送って遺伝子解析にかけて、それらが本当にSTAP細胞であるのかどうかを検証しているという。彼は、「私が胚盤胞に注入した細胞は一体何だったのか、それが何よりも知りたい」としている。

http://www.nature.com/news/stem-cell-method-faces-fresh-questions-1.14895

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