Nature/Scienceのニュース記事から



第63回(2014年4月4日更新)

STAP細胞論文についての理化学研究所による調査報告

4月1日に、理化学研究所からSTAP細胞についての論文における不正の調査結果が発表され、すぐさまNature Newsを含む海外メディアでも取り上げられた。

調査結果では、疑義のあった6点のうち2点について、小保方氏による不正があったと認定した。一方、共著者である笹井氏及び若山氏は、不正を行ったとは言えないが、チェックする責任があったのにそれを怠ったと認定された。丹羽氏については、責任は不問とされた。

小保方氏による不正があったと認定された2点は以下の通り。1点目はDNA電気泳動像に切り貼りが見られた点。もう1点は、小保方氏の博士論文に使用された画像に酷似した画像が再利用されていた点。

小保方氏は記者会見には現れなかったが、調査結果を承服できないとして、近日中に理研に対して不服を申し立てると文書で声明を出した。

DNA電気泳動像の切り貼りについて小保方氏は、よりはっきりと見える画像を使用しただけで、それが問題だとは思っていなかったとしている。また、この切り貼りにより研究結果は何ら変わることはなく、改ざんの意図はなかったし、改ざんしてもメリットもない、としている。また、博士論文から流用されたとされる画像は、細胞をピペットに通すことで物理的ストレスを加えて作った細胞が広い分化能を持つことを示したものであったが、今回の論文においては同じ画像が、弱酸性の溶液に浸すことにより作られたSTAP細胞の分化能を示す図として使用された。これについて小保方氏は、悪意のないミスであり、既にNatureに訂正を申し出たとしている。しかし理研の調査委員会は、画像に加えられた文字が、博士論文の時と今回のNatureの論文の時とで変更されていることから、不正があったと結論づけた。

調査委員会は、小保方氏から、Natureの論文に使用したとするスライドの提供を受けたが、データ管理のずさんさと、研究室内の試料が適切にラベルされていなかったことにより、それがどこからきたのかを特定することは不可能であったという。

調査委員会は、STAP細胞が実在するかの問いには一貫して、この調査の範疇を超えているとして回答を避けた。

Nature側は、「Natureは審議中の訂正や撤回があったとしてもなかったとしても、それについてコメントすることはない。Natureはこれらの論文についての全ての問題を重く受け止め、独自の調査を行っている。理研の調査結果も考慮に入れる。現時点ではこれ以上のコメントはできない」としている。

また、今回の調査では、共著者の笹井氏、若山氏、丹羽氏の責任についても言及された。笹井氏は論文の執筆を指導した。小保方氏が自身の研究ユニットを持つ前は、若山氏の研究室で研究をしていた。笹井氏と若山氏は不正には関わっていないが、データのチェックをする責任があったのにそれを怠ったとされた。両氏とも謝罪の声明を出している。笹井氏は「問題のあるデータを取り除いたとしても、やはりいくつかの実験結果はSTAP細胞によってしか説明できない」としている。丹羽氏の責任は不問とされた。

会見では、「小保方氏は本当に実験をしていたのか」との質問に対し、「はっきりと答えるのは難しい。なぜなら、小保方氏が提供した2冊の実験ノートには日付やその他の基本的な情報が記載されていなかった。」「これまでに若手研究者を指導してきたが、このような不注意さは見たことがない」と答えた。

理研は今後、当該研究員の処分を検討する。丹羽氏と別のもうひとりの研究員(論文の著者ではない)はSTAP作成技術が実際に可能なものなのかどうか1年かけて検証をする。

香港中文大学のKenneth Lee氏は、小保方氏のプロトコルにできる限り従って実験を再現しようと何度も試したが、うまくいかなかった。理研がSTAP細胞作製の再現に1年かけることについて、Lee氏は、「いいと思うが、彼女の方法ではできないと思う」としている。

4月2日、理研理事長の野依良治氏は、今回のNatureの論文2報のうち、問題のあったものを撤回するよう促すと述べた。しかし実際に撤回されるかどうかは、著者らとNatureが決定することである。また、野依氏は、理研内に「内部改革オフィス」「データ管理から結果の発表に至るまでの理研の研究のやり方を、外部の専門家によって評価する委員会」を設置するとした。さらに、倫理教育をどのようにして行うかを根本的に考え直すために、効果的な教育プラットフォームを作成する、としている。

http://www.nature.com/news/stem-cell-scientist-found-guilty-of-misconduct-1.14974

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