Nature/Scienceのニュース記事から



第65回(2014年4月28日更新)

STAP細胞論文の調査委員が自身の論文における疑義により辞任

理化学研究所のSTAP細胞の論文の調査委員の石井俊輔氏が、調査委員を辞任した。石井氏の過去の2報の論文に問題があると指摘されたためである。4月24日に、石井氏が共著者である2004年と2008年の2報の論文における問題点を指摘する8ページにわたる文書が匿名でインターネットに投稿され、広く出回った。問題点は、電気泳動ゲルの写真におけるレーンの切り貼りである。

2008年の論文はOncogeneに掲載されたものであり、石井氏は、4月24日中に理研のホームページに説明を掲載した。それによると、論文の本文の記述に合うように1つの電気泳動ゲル写真の中のレーンを入れ替えたが、その際にミスがあったということで、ホームページには実験ノートに記載されているオリジナルデータも掲載されている。石井氏は既にOncogeneの編集部に訂正を申し入れ、受理されたとしており、さらに自身のホームページでは、このミスは実験結果に何ら影響を与えない、としている。

2004年の論文はJournal of Biological Chemistryに掲載されたものであり、4月25日にホームページ上に説明を掲載した。それによると、”space saving”のため、同じ電気泳動ゲル内の別のレーンを切り取って貼り合わせて論文に使用したとのことである。実験ノート上のオリジナルデータにはどのレーンがどのサンプルかもはっきりと記載されており、これもホームページ上に掲載された。石井氏は、これら操作は10年前の当時のルールでは問題ないと考えていたが、現在のより厳しくなったルールにおいては、切り貼りしたことを明確に示す必要があると認識している、としている。この論文については、石井氏は訂正を申し入れる予定はない。

STAP細胞問題の小保方氏によるゲル写真の切り貼りが不正であるとするならば、石井氏によるこれらのゲル写真の切り貼りも不正とするべきだと批判する研究者もいる。小保方氏の弁護士は、この石井氏の切り貼りを引用して、小保方氏の件の再調査を要請している。

しかし、小保方氏のケースとの違いは、小保方氏はゲルのレーンを回転させ、引き延ばして貼り合わせていることであり、データの操作度合いがより高いと考えられる。また、理化学研究所によれば、小保方氏の件では実験ノートでは、どのデータが論文に使用されたのか記載がなかったということであった。

理化学研究所は、石井氏の件で調査を行うかどうかを決定するために、現在情報を集めているとのことである。この決定までには1週間程度かかるという。

石井氏は4月25日付けで小保方氏の件の調査委員を辞任した。石井氏は、ホームページに掲載した実験ノートと元データから、自身の2報の論文において不正がなかったことは明らかだ、としている。

http://blogs.nature.com/news/2014/04/investigator-of-controversial-stem-cell-study-resigns.html

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