Nature/Scienceのニュース記事から



第66回(2014年5月3日更新)

WHOが「ポスト抗生物質時代」を警告

WHOが発表した報告によると、抗生物質の乱用により薬物耐性菌が急増しており、このままでは近い将来、軽い怪我やありふれた感染症により死に至る「ポスト抗生物質時代」に突入する可能性が高いという。

特に懸念されるのは、カルバペネム系抗生物質に対する耐性菌の拡大傾向である。カルバペネム系抗生物質は最終手段として使われる抗生物質である。グラム陰性菌という主要な種類の細菌による感染のうち、半数以上がカルバペネム耐性菌によるものであった地域もあるという。

カルバペネムに取って代わるような抗生物質は開発されていない。製薬会社にとっては新しい抗生物質を開発する経済的動機がない。また、グラム陰性菌に抗生物質を取り込ませる新しい方法を見つけるのは困難であると研究者たちは考えている。

報告の中で最も驚くべきことは、抗生物質に対する耐性菌のデータ収集が世界規模で行われていないことかも知れない。抗生物質と細菌の組み合わせのうちで最も懸念されている9組についてのデータを持っていたのは、今回の調査に参加した129のWHO加入国のうちわずか22ヶ国であった。

この報告は世界規模で追跡ネットワークを構築する必要とがあるとしているが、資金が調達される見込みは薄い。

http://www.nature.com/news/who-warns-against-post-antibiotic-era-1.15135

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