Nature/Scienceのニュース記事から



第73回(2014年8月7日更新)

エリート研究者の自死により日本に激震が走る

日本のトップクラスの幹細胞研究者である笹井芳樹氏が死亡した。自殺と見られる。52歳だった。

笹井氏は理化学研究所のCenter for Developmental Biology(CDB)の所属で、ES細胞を別の種類の細胞へと分化させる技術でよく知られていた。2011年には、目の発達の初期段階を模倣したOptical Cupという三次元構造をin vitroの系でES細胞から作製して世界を驚かせた。

しかし最近は、今年1月にNature誌に発表されたSTAP細胞に関する2報の論文について相次いで疑義が浮上し、筆頭著者である小保方晴子氏が研究不正を行ったと判断された。

笹井氏はこれら2報の論文の共著者であったが、不正をしたとは判断されなかった。しかし、論文執筆の指導が不十分であったとして厳しく批判された。中には、それら不正行為にCDBが深く関与したとの憶測にもとづく批判もあった。6月12日には外部の独立委員会がCDBの解体を勧告した。笹井氏はCDBの副センター長であり、CDBの設立に貢献し、CDBを世界的研究所へと発展させるのに力を尽くしていた。

8月5日午前9時過ぎ、笹井氏はCDBの隣のInstitute of Biomedical Researchの階段で首を吊っているのを発見された。そして、11時過ぎに死亡が確認された。現場にあった鞄の中には3通の手紙があり、それぞれCDB幹部、研究室のメンバーたち、そして小保方氏に宛てられたものであった。

理研の野依良治理事は、今朝の短い文書でこの最先端の研究者の死を悼み、「科学界はかけがえのない科学者を失った」と述べた。

http://blogs.nature.com/news/2014/08/researchers-death-shocks-japan.html

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