Nature/Scienceのニュース記事から



第77回(2014年12月8日更新)

エボラワクチン開発競争

2014年11月26日、今回の流行が始まって以来はじめて、エボラワクチンの治験効果がNew England Journal of Medicineに発表された。米国アレルギー感染症研究所(NIAID)とGSKが共同開発をしており、エボラウイルスのザイール株およびスーダン株ののタンパク質を発現するように操作されたチンパンジーアデノウイルスで出来ている。

9月に行われた第1相安全性治験で、アメリカの健康なボランティア20人に投与したところ、全員が何らかの免疫反応を示した。高用量を投与した場合、現在西アフリカで流行を起こしているウイルスを非常に近い株のウイルスに対する抗体が増加し、CD8陽性T細胞も増加した。

サルにこのウイルスを投与すると、ヒトの場合と同様に抗体とCD8陽性T細胞が増加し、なおかつエボラ感染も防げたという結果が既に出ている。ただし、このウイルスは先述のように2つの株のウイルスに対するものであり、西アフリカで実際に使われるであろうザイール株のみに対するワクチンとは異なるということである。

ザイール株のみに反応するワクチンも既に複数の国で安全性試験が行われ、結果が待たれている。これらの治験の結果をもとにワクチンの種類や用量が最適化され、来年の流行地域での有効性試験に使われることになる。来年1月には、候補となっているワクチン全ての情報が出揃う見込みである。

問題はワクチンの効果をどう解釈するかである。従来より、抗体量を増加させるワクチンが最も良い免疫効果を示すとされてきたが、最近の動物実験により、CD8陽性T細胞の増加の方がより重要だとも言われ始めている。抗体とCD8陽性細胞の両方を増加させるワクチンが理想的だが、もし片方の増加が見られない場合には、有効性治験においては追加免疫が必要になると考えられる。

サハラ地域ではマラリアの存在により免疫が抑制されるため、ワクチンによる免疫反応が弱いことがある。このため、現在アフリカのマリで行われている治験の効果は、用量を最適化するために特に重要である。

サルで実験を行う場合、ヒトが通常さらされるエボラウイルスの量よりも大幅に多いウイルスが用いられるため、感染を防ぐのに必要な免疫反応の強度を過大評価する恐れがある。

また、考慮すべき副作用もある。安全性試験で軽い発熱のあったケースもあった。このようなエボラ症状と被る副作用は混乱を招くという懸念もある。しかし、この点においては、投与対象患者に事前にそのような副作用の可能性があることを知らせることで対処できるという意見もある。

NIAIDとGSK以外にも、カナダ公衆衛生局とNew Link GeneticsおよびMerckもワクチンの治験を行っている。Johnson and JohnsonとNIAIDも共同で別のワクチンを開発しており、第1相試験は来年初めに始まる予定である。

http://www.nature.com/news/positive-results-spur-race-for-ebola-vaccine-1.16468

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