Nature/Scienceのニュース記事から



第78回(2014年12月12日更新)

論文の不正な査読が増加している

投稿論文原稿に対する査読者割り当てシステムの不備を突いて不正に原稿を受理させる事例が増加している。

2012年に発覚したある事例では、投稿者が希望する査読者として、架空の名前や同僚研究者の名前とともに自分に直通するメールアドレスを挙げていたため、自分の原稿を自ら査読する事態となっていた。余りにも早い返信と好意的な査読コメントに対して編集者が疑問を抱き、問題の発覚に至った。この投稿者は、28報の論文を撤回することとなった。

過去2年で、査読の不正により少なくとも6事例で110報以上の論文が撤回されている。これらの事例に共通しているのは、出版社の自動化されたシステムの脆弱性につけ込んで、自分の論文原稿を自分が査読するように仕向けていたことである。

このような不正を招く原因として、投稿者自身が査読者を推薦するシステムがまず挙げられる。高度に専門化した今日の研究分野においては、それもやむを得ないとしても、少なくとも編集者は投稿者が推薦した研究者が投稿者と同じ所属でないか、あるいは過去の論文で共著者であったことがないかなどを調べることは出来るはずだという意見もある。また、編集者によっては、投稿者が推薦した査読者候補は敢えて外すということもある。

また、別の種類の不正として、「引用の環」というものがある。研究者同士が互いの論文を異常に高い頻度で互いに引用するというものである。出版社の投稿者/査読者管理システムでは大抵、各個人のこれまでの投稿・査読の履歴を編集者が見ることができるようになっている。

ある出版社において、査読コメントの言葉づかいや査読のスピード(異例の早さ)、引用文献リストなどを調べたところ、130人のあやしい個人が見つかった。その中心にいた研究者は不正を認め職を退いた。そして、関連する60報が不正査読および引用の環のため撤回され、編集者も役を退いた。

上記2例において、査読者への連絡システムの不備が利用された。査読の依頼のメールにはログイン情報が含まれているので、この依頼メールが偽のメールアドレスに送られれば受け取った人物はシステムにログインできてしまう。

60報の論文を撤回した先述の出版社の事例では、60報のほとんどにおいて著者が推薦した査読者のみに査読を依頼していた。にも関わらず、現在も著者による査読者の推薦という慣行は残っている。

http://www.nature.com/news/publishing-the-peer-review-scam-1.16400

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