研究者の声:オピニオン



2012年3月26日更新

欧米社会に対する劣等感はそろそろ捨てるべきである

BioMedサーカス.comの読者の皆さま初めまして、コンタです。アメリカの某有名大学に研究留学中です。本文章は当初、『海外で活躍する医師・研究者の声』の「海外ラボリポート」として執筆したのですが、あまりにも内容が過激ということでBioMedサーカス.comの編集部よりストップがかかってしまいました(笑)。なのですが、せっかく時間をかけて書いたので編集部にお願いして、表現を少し書き直すことでオピニオンとして掲載してもらえることになりました。(色々とご助言くださった編集部のMさんどうもありがとうございます!)

私は課程博士でPh.D.になった後、そのまま2年間ポスドクとして同じ研究室で研究を続けました。その後に今のラボに研究留学をしました。本当は博士号を取得したらすぐに留学をしたかったのですが、私は「Ph.D.の研究者は研究のプロであるから給料は留学先のラボからきちんともらう」という強い信念があったので、留学先のラボを探すのに時間がかかってしまいました。

留学先のラボおよび大学は私の研究分野では有名なところなので、最終的に留学受け入れが決まったときは非常に嬉しかった覚えがあります。給料も満足とはいわないまでも最低限は出してもらっていますし(健康保険もついています!)、コネのない自分にとっては上出来だと今でも思っています。(アメリカでは医療費も健康保険代も高いので、留学するときは健康保険の補助をお願いしましょう)

留学先をどうやって決めたのか?という質問は良く聞かれるのですが、その答えはシンプルです。すなわち「自分の研究への熱意を相手(留学先のボス)に伝えまくる」です。人種も文化も違う人間とはいえ、相手も研究者です。こちらの研究に対する情熱をわかってもらえば、きっと受け入れてくれると私は思っています(実際に私は受け入れてもらえました!)。

では、どうやって熱意を知ってもらうかですが、これには沢山の方法があるのでベストなものを言うことは出来ません。ただ私の場合は、メールと手紙(自分の論文の別刷りも同封)を何通も出しながら、学会でそこのラボのポスターの発表者とディスカッションをし、最終的にはラボまで出張してプレゼンをさせてもらって留学受け入れの返事をもらいました。これがベストとは言えませんが、自分としては当時の自分が出来る全てをやりきったと思っています。

さて、今は渡米から半年強が過ぎています。アメリカの生活は楽しいです。全てが豪快で、日本からだと行くのが大変な観光名所も週末プラスαの小旅行気分で気軽に行けます。仕事の方も自分の興味ある分野の研究が出来ているので満足しています。ですが、渡米5ヶ月を過ぎたあたりから、ある疑問が沸々と湧いてきました。それは「アメリカって本当にそんなに研究が進んでいるのか?」ということです。

もちろん今のボスは優秀です。人としても研究者としても尊敬しています。しかし、だからと言ってアメリカの研究が進んでいるということとは別です。たしかに超がつくほどの一流雑誌にはアメリカ(もしくはイギリス)の研究機関からの論文が多く掲載されています。医学や生物学の分野のノーベル賞受賞者も欧米の研究者の割合が大きいです。

しかし、それは単純に今の研究の共通言語が英語で、研究のトレンドを創っているのが英語を母国語とする人たちだからなのではないでしょうか?別の言い方をすれば、欧米の学術雑誌が欧米の大御所研究者と結託して研究のルールを決定しているのではないか、ということです。政治・スポーツの世界でも、統一ルール(グローバルスタンダード)は基本的に欧米重視だと聞いています(日本発祥であるはずの柔道ですら!)。それと同じで、研究の世界でも欧米に有利なルールでやっているので欧米が強いだけなのではないでしょうか。

欧米にとって有利なルールの一番大きなものが「学術論文は英語で書く」というものだと思います。当たり前すぎてこれをルールとして認識していない人が多いかもしれませんが、このことは私たちのような英語を母国語としない人たちにとっては非常に不利なルールです。このルールのため、結局のところ日本からの論文は欧米からの論文に比べて採択率が下がっているように思います(個人的な感覚ではimpact factorで3~5くらい違う)。

こちらで研究のディスカッションをしていて思うのですが、英語を母国語とするポスドクは実はそんなに実験の細かいことを理解していないことが多いように思います。日本から来たポスドクの方がずっと色々と知っています。しかし、残念なことに英語でディスカッションをしなければならないので、なんとなく英語を喋れるポスドクたちに煙に巻かれながら結局は議論に負けてしまうようなところがあります。

自分も英語には苦労していて、英語のディスカッションでは英語スピーカー相手にはなかなか充分に議論することができないでいます。そういったポスドクが大して実験をしていないのに、英語力を発揮して(?)ボスやシニアメンバーに自分をアピールしているのを聞くと非常に悔しい思いをすることがあります。(自分は実験結果でアピールをしているので何となく不公平にも思います・・・)

こちらに来てアメリカは大したことはないと思うようになったのですが、かく言う私も日本にいるときはアメリカ崇拝とも言える感情を持っていました。過激な表現を使えば、アメリカには勝てない、という奴隷根性です。アメリカ人は男性は屈強でハンサム、女性はスラットしていて美しい。料理もステーキなど豪快で、住む場所も広い。世界の警察を地でいく強い国であり、スポーツもIT技術も強い、というように思っていました。

しかし実際はそうではありません。アメリカ人で映画俳優やモデルのルックス・体型を維持している人は少数です。肥満の割合が多く、肌もガサガサです。料理は繊細さの欠片もなく大味で、一般の住居は古く汚いです(広いことは広いですが)。さらに、強引な外交政策は今は多くの人が知っていると思います。また、スポーツやIT技術も、自分に有利なルールを創っているのですから強いのは当たり前です。インターネットのスピードが5M程度でハイスピードインターネットと聞いたときは絶句しました。しかも、アメリカは自分が負けそうになるとルールを変えたり相手を無理矢理潰したりします(トヨタの件が良い例です)。

というようなことを、もっと過激につらつらと書いたのでBioMedサーカス.comの編集部から掲載ストップがかけられてしまったのです(汗)。結論として何が言いたいかというと、アメリカはそんなに大したことないですよ、ということです・・・。

最後に一つだけアドバイスをさせてください。

皆さん欧米コンプレックスは捨てましょう!

英語が出来ないのは別に恥ずべきことではありません。相手は英語だけしか話せないので、仕方ないのでこちらが相手に合わせて英語を喋ってあげている、という認識を持ってみれば、無意味に英語スピーカーに引け目を感じることが少なくなると思います。日本を離れてアメリカに来てみて初めて日本の良さに気がつきました。まだしばらくはアメリカで研究を続けますが、これからも日本人であることを誇りにしようかな、と最近では思うようになっています。

(あ、でもアメリカも良いところはありますよ!一度はアメリカで暮らしてみると視野も広がるし楽しいはずです(笑))

執筆者:コンタ

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