研究者の声:オピニオン



2012年5月28日更新

ある八百屋の戯れ言

はじめてBioMedサーカス.comのHPを見たとき思わず「しまった」と声が出てしまいました。

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私は今40歳半ばの中年オヤジで、西日本の片田舎で八百屋をやっています。なぜ、そんな人間がBioMedサーカス.comに文章を?と思われる方もいるかと思いますが、答えは至極単純で、私は以前は研究者をやっていたからです。

私は出身こそ田舎でしたが、大学で東京に出てからはPh.D.を取るまではずっと東京で、取ったあとはアメリカのサンフランシスコという都会で生きてきました。農学系の研究者をやっていたのですが、在学中もポスドク中も、研究そのものは順調と言える悪くない業績でした(在学中はJBCなどを複数、ポスドク中はNature姉妹紙を含むimpact factor10を超える雑誌に名前が載りました)。

ただ、アメリカの景気が悪くなりNIHの研究費がカットされるようになり、アメリカでの独立は難しくなってしまいました。また、留学中に恩師が定年退官されたので、日本に帰るアテもなくなってしまいました。そうこうしている間に40歳の大台(?)にのってしまい、このまま一生ポスドクなのかなあと不安に思い始めたところ、実家の両親から店を継いで欲しいという連絡があったので、ここら辺が潮時かなと思って大人しく田舎に戻ることにしました。(両親は研究の道に入った自分に八百屋を継がせるつもりはなく店はたたむつもりだったようですが、どうも私の状況を察したのか救いの手(?)を伸ばしてくれたようです)

そんなこんなで研究者から一介の八百屋になったわけですが、恥ずかしながら研究者という生き方に未練がありまくりで、仕事がないときはネットなどで色々と研究のことを調べています。余談ですが、研究者をしていたときは研究論文を読むということは息をするくらい当たり前だったのですが、八百屋をやっている今は、出版社にお金を払わなければほとんどの論文は全文を読むことが出来ないので何だか寂しい気持ちです。そんな状態なので、PLoS ONEを初めとしたオープンアクセスジャーナルが増えてきているというのは、非研究者で研究に興味のある人にとっては有り難く、研究の裾野を広げる意味で良いのではないかと思っています。

さて、研究業界に少しでも繋がりを持っていたかった自分なのですが、最近になってふとした拍子にBioMedサーカス.comというHPがあることを知りました。そのとき、「これなら自分でも出来た」、「自分がやっていればよかった」、「そうすれば研究業界との接触を保てた」との思いが頭を駆け巡り、冒頭の「しまった」という言葉に繋がったのです。

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じめっとした話になってしまいましたが、実のところそんなに今がunhappyということではありません。八百屋という職業もやりがいがあり面白いですし、ポスドク時代のように徹夜続きということもありません(両親が店の基盤を確立してくれていたからかもしれませんが)。また意外なことに、研究者時代に培った(?)論理的思考なども八百屋の経営を考える上で非常に役立っていて、研究者時代の自分の時間は無駄ではなかったと思うことがよくあります。

今は私より少し若い世代の研究者が職がなくて困っていると聞きます。研究者に未練のある自分が言うのもおかしな話ですが、思い切って研究業界外に出てみることも大事なのかもしれません。仮に研究者を辞めたとしても、そこまでに培った経験は生かせると思います。

まとまりのない文章になってしまいましたが、研究者が研究者を辞めたあとの生活の一例として読んでいただければと思います。

執筆者:アハトーヌルーアハト

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