研究者の声:オピニオン



2012年8月24日更新

米国アカデミアの過去・現在・未来


− 国家予算のうち研究費に割り当てられる金額が減る。
− しかし、アカデミアにいる研究者(PI、ポスドクともに)の絶対数は増える。

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− 力のあるPI達は研究費を獲得できる。
− 力のないPI達は研究費を獲得できるPIと手を組むかアカデミア業界を去る。
− この頃、企業へ進もうとするポスドクの数が増える。また、研究で飯を食うことを諦めるポスドクも出てくる。

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− 力のあるPI達は益々勢力を伸ばし、超一流雑誌へと論文を出しまくる。結果として研究費をさらに獲得できるようになる。
− 超一流雑誌へ論文が出せなくなってきたPI達は研究費を獲得できなくなり、雇うポスドクの数を減らす(もしくは自国から奨学金を持ってくるポスドクを集める)。最悪の場合は、ラボを閉鎖することになり自分の職探しを始めるようになる。
− この頃になると、企業は充分にポスドクを雇っている状態になっており、ポスドクがアカデミアを諦めて企業へ進もうとしても就職は難しくなる。とはいっても、アカデミアに居続けることすらも出来なくなり、職そのものを失う者が出てくる。

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ー 超一流雑誌へ論文を出すことが研究費獲得に繋がるようになるため、そのような雑誌にアクセプトされうるプロジェクト(論文にならないリスクも当然ある)のみをポスドクに課すPIが続出。
ー 結果として、多くのポスドクは業績が出ないまま研究者として生きて行く道を閉ざされる。幸運なごく一部のポスドクだけが業績を出すことに成功する。しかし、研究費および独立ポストが減少しているため独立することは困難を極める。そのため、仮に業績が出たとしても、力のあるPIの下で半独立状態として生きる道を余儀なくされる。
− この頃、一部の研究者は企業と積極的に手を組んだり自らの研究成果を元に起業することを目指す。しかし、成功するのは研究と関係のない政治力・商売の才能がある研究者で、残りの研究者達は更に悲惨な状況へとなる。

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− 大御所研究者達により形成された派閥の枠内にいる人たちの間で研究費を分担する状況が出来上がる。 br>− 派閥に入れなかったPI達はギリギリのところでラボを運営するようになり、小さな失敗が即ラボの閉鎖につながる。
− 大御所研究者に気に入られるかどうかがポスドクにとって一番重要なポイントとなる。
− 基本的にポスドクは独立できなくなるが、企業への就職も閉ざされた状態となる。

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− 大御所研究者と雑誌編集者・国家予算委員の蜜月の関係が始まる。
− PIに気に入られるためにデータの捏造をしまくるポスドクが増えてくる。
− 超一流雑誌に掲載されるためにデータの捏造をしまくるポスドクが増えてくる。
− 結果としてアカデミアの研究は企業の研究に量・質ともに劣るようになる。

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− 大御所研究者もしくは有名大学に在籍している研究者のうち、早くから企業と手を組んでいた者が力を伸ばすようになる。
− 独自路線を進んでいた研究者が、自ら研究費を獲得する方法を見つけ出し、国家予算をあてにしなくとも研究を進めるようになってくる。
− 昔ながらの方法で運営しているラボにいるポスドク研究員は単なる使い捨ての安い労働力となる。

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執筆者:研究業界を長く見てきた者

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