研究者の声:オピニオン



2012年11月7日更新

iPS森口氏に学ぶ一流研究者への道

大学院生やポスドクといった駆け出し研究者の中には、いかにして業績を積み上げて自分という研究者を多くの人に知ってもらえばいいのかで悩んでいる人が多いと思います。特に昨今のライフサイエンス系の若手研究者の多くは高学歴ワーキングプアを地でいっているので、常日頃から良い研究成果を出さないと生きていけないというプレッシャーに潰されそうになっているのではないでしょうか。

でも、世間一般に知ってもらう研究者になるためには、実は秘密の抜け道があります。その方法は、iPS細胞の偽研究で一躍有名になった森口尚史氏のこれまでのやり方から学ぶ事が出来ます。

あ、待ってください。何も捏ち上げの研究で有名になれと言ってるのではないのです。森口氏の方法を使えば、同等以上の研究業績を持っている同業者よりも遥かに先を進むことが出来るということです。

森口氏のやったことは研究もしくはサイエンスという観点で判断すれば100%悪です。しかし、彼が有名になろうという目的で行動した内容は、それだけを見れば評価されるべきだと思います。その点だけは、ぐちぐちと文句ばかり言っている万年ポスドクや、将来をいたずらに悲観して元気のない学生なんかよりも遥かに優れています。

さて、ここで改めて森口氏の取った行動を列挙してみましょう。

1)ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院、東京大学という超有名な研究機関に所属する
 2)PubMedで検索すると、Lancetなど超一流誌への論文が出てくる
 3)短い論文だけでなく、フルペーパーの論文も出している
 4)学術雑誌のEditor(編集者)になっている
 5)読売新聞や毎日新聞などに複数回研究内容を紹介されている
 6)iPS細胞というノーベル賞を受賞するような注目度の高い分野の研究をしている

上記のことだけを見れば、森口氏を一流の研究者だと誤解する人が出てきてもおかしくはありません。なぜならば、多くの人はその研究者が何をなしたかよりも、どこに所属して(1)、どこに論文を出していて(2&3)、研究業界でどのような役割を担っていて(4)、その人の研究内容がインパクトのあるものであるかどうか(5&6)に興味を示すからです。

それでは、上記6点を成し遂げるために森口氏が取った行動をお示ししましょう。

1)自らを積極的に研究機関に売り込み、Visiting Scientistや特任研究員という身分でも構わずに契約する
 2)どの雑誌のどのコーナーならばPubMedに掲載されるかを調べ、peer-reviewシステムがなくても掲載されるものを探し出して実際に投稿する
 3)自らがEditorをしている雑誌で掲載する
 4)知り合いの先生が創刊に関わった新興雑誌のEditorとなる
 5)地道に新聞社に営業活動をする
 6)研究業界の調査を行い、どこが今最もホットかを判断してその分野に飛び込む

いかがでしょうか。森口氏が非常に貪欲に自分を売り込みながら頑張ってきたことに驚く人が多いのではないでしょうか。将来の見通しがないと絶望している研究者の中に、これだけ自分を売り込むことに全力を尽くしている人がどれだけいるのでしょうか。

もちろん、彼のやった研究は捏造です。しかしながら、逆に考えれば、捏造研究であっても、上記のようなことをすれば、それなりに認められる研究者になりうるということです。つまりは、普通の研究者が一般的な業績を持っていれば、努力次第で色々な展開が見込めるということなのです。

森口氏が悪いということでマスコミは幕引きを狙っているようですが、研究者にとっては、そんな森口氏からも学ぶ事があるのではないかということでBioMedサーカス.comに寄稿してみました。Twitterなどでは研究者のキャリア構築の方法が時々盛り上がっているので、今回の内容がそういった議論の助けになればと思っています。


執筆者:失敗から学ぶのが好きな人

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