研究者の声:オピニオン



2013年3月31日更新

学会なんかいらない!

実は、最近学会に関して強く思う事が有ります。たくさんあり過ぎなのじゃないか?と。しかも、分子生物学会と生化学会をはじめとして、内容の重複が激しい。共同開催をするくらいなら、いっそ合併して、減らしてしまったらよいのに。

そもそも、学会の枠組み自体が、昔と今ではちがいます。30年前くらい昔は、ずっとシンプルでした。例えば、動物の形態に関心があれば、発生学会に入っていればよかった。もうひとつくらい加えるなら、動物学会でいろいろな生物を見る、とか。学会の名称は、おおざっぱの興味の対象を表現しているだけなので、どんな人でも入ってこれそうです。実にシンプル。

しかし、最近は様様な切り口で、もっと専門的な学会が作られています。例えば、同じ動物を使う人が集まって、モデル実験動物ごとに学会が作られます。さらに、同じ実験技術をつかう研究者、開発する研究者が集う学会。さらに、「生命をシステムとして理解する」とか、「生命を作る」という思想で研究者がまとまって学会ができています。研究は1種類でも切り口は無数にあり、それごとに学会を組織することが可能で、実際にそうなりつつあります。いろんな学会に行って、結局同じメンバーでつるんでばかり、とか有りませんか?

そもそも、本当にそれらは全部必要なんでしょうか?
今は、ITの進化で、研究者同士がコミュニケーションを取る方法はたくさんあります。海外の研究者と直接コンタクトすることは、以前よりもはるかに簡単になったし、海外の学会に行く資金的なハードルも低くなっています。単に情報交換のため、と言うよりも、研究者仲間の「社交」をしにいっているだけなんじゃ?例えば、そこには自分が近未来にサブミットする論文や、グラント申請書のレフェリーになる研究者がいる可能性が高いので、研究の宣伝をできるだけしておきたい、とか。

「無いよりは有った方が良い?」という意見もあるかもしれません。
いえいえ、そんなことないです。デメリットたくさんあります。
だいたい、しょっちゅう学会に行きまくってたら、疲れてしまうというか、研究している暇が無くなります。研究に取って最大のリソースは「考える時間・実験する時間」です。情報交換は確かに必要ですが、独創的なアイデアは孤独な思考からしか生まれないんじゃないでしょうか?それに、開催する手間だって費用だって大変だ。分子生物学会くらいになると、会場にWi-Fiのネット環境を整備するだけで1000万とかかかったりします。会員が5000人参加し、参加費、旅費、宿泊費で平均5万円かかるとすると(多分、そのかなりが研究費=税金です)2億5千万かかります。それだけのメリットがあるのか?さらに、主催する関係者の労力と時間も計り知れない。たいていは、その分野のリーダー的な研究者がやることになりますが、研究にマイナスであることは間違いありません。その上、学会組織が「法人格」を持つことが必要になってきているため、規約等の整備などの「組織を維持するための事務」も半端じゃありません。

以上を考えると、(過剰な)学会の存在は、日本の科学の進歩に関してマイナスであるように思われます。会員が減って困っている学会、演題が集まらないのでぎりぎりまで演題募集をする学会、しょっちゅう年会の共同開催をする学会、そういう学会は、速やかに解散するか、他との合併を図るのが、関係者諸氏にとって一番良いのではと考えます。
(じゃあ、分子生物学会はどうなんだって?う〜ん、、、、、)


執筆者:2013年、分子生物学会年会長 近藤滋
(この意見は筆者が所属する組織の意見を反映しているものではありません)

*本記事は日本分子生物学会の『日本の科学を考える』より許可を得て転載させていただきました。転載元のページにはコメント欄もあり、本記事の内容に関して様々な議論が行われています。

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