研究者の声:オピニオン
Tweet2013年6月26日更新
「日本からの研究論文が質量ともに低下した」という科学技術白書の報告を読んで
「日本の科学技術力を憂う人」です。BioMedサーカス.comの読者の中には既にご存知の方もいるかと思いますが、今年の科学技術白書が出ました。その内容を簡潔にまとめた読売新聞の記事をまずは紹介したいと思います。
日本発の研究論文「質量ともに低下」…科技白書
政府は25日、2013年版の科学技術白書を閣議決定した。日本の国際競争力が低下しつつある現状を踏まえ、「科学技術力で成長と豊かさを追求する国を目指す」と明記。科学技術の実用化によるイノベーション(技術革新)創出に力を入れていく姿勢を、前面に打ち出した。
白書は、日本発の研究論文の世界的な位置づけが、「質量ともに低下している」と指摘した。09〜11年の論文数は、10年前の2位から5位に低下。特に、他の論文に引用された回数が上位10%に入る「影響力の大きい論文」の数は、4位から7位に下がっている。このため、科学研究を原動力としたイノベーションの創出に向け、若手が研究しやすい環境作りや国際共同研究の戦略的な推進とともに、研究成果を事業化につなげる支援策が必要だと訴えている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130625-OYT1T01014.htm
日本のアカデミアに籍を置くものとして、このような事態になっていることは薄々感じていましたが、改めて数字として表された結果を見ると愕然とした思いです。しかし、非常に残念なのですが、私自身はこの問題を解決する妙案は持っていません。
では何故このような文章を書いているのか?ということになるのですが、答えは単純で、この問題を少しでも多くの人に知ってもらいたいからです。おそらく、この手の問題を解決するには数で攻めないといけないと思います。
この私の文章が、ネット/現実の世界のいずれにおいても、少しでも多くの人に現在の日本の科学技術の分野にはびこっている問題を議論してもらえるキッカケになればと思います。一応、参考までに、本件において私がネット上で見かけた意見を以下に列挙しておきます。(ただし、全ての意見に私が同意しているというわけではありません)
・優秀な研究者が最初から国外へ出てしまっている証左。海外留学が減少しているのも、最初から海外の大学へ入学しているから。問題は学生ではなく日本社会と教育機関にある。
・質まで下がるには緊縮予算以外の要因もあるはず。発展途上国並みの管理型偏重の教育制度から創造・後見型重視の制度的発想転換も必要なのでは。
・大学教授に、管理や事務の仕事をやらせる限り、この傾向は止みません。大学教員をリスペクトしない経営者と国民のせいです、当然の報い
・研究関係者の給料は、同年齢者の年収の半分以下、良ければ1/3である現実。
・事業仕分けの悪影響
・そりゃ、若手をこれだけポスドクで使い捨てにしてたら、そうなるわな。
・老害教授陣が居座るせいもあると思う
・日本の大学は忙し過ぎるからな。文科省が変なことばかり要求してくるから、それに合わせようとして、大学が余計忙しくなっている気がする
・民主党の仕分けで予算削減&モチベーション低下の結果としか思えないんですが。
・金はケチるうえに実用化とかいう頓珍漢な目標設定。良くなる予感が皆無。
・大学のレヴェル低下も大きくないか?今の修士は僕の時代の学部生程度とも言われる。また、研究成果を事業化につなげるというが基礎研究はそういうものではない。
・ポジションが増えてないのに終身雇用の年寄りが70近くまで居座るようになってるんだから、生産性が下がるのは当たり前。
・外国人の国費留学支援より、日本人の理系学生への経済支援が必要。それこそ学費無料化でもいいぐらい。
・研究者を金漬けにするのではなく、教育課程でみっちり勉強させることが先なのでは?結局、官僚は直近の成果しかみないからバラマキに終始する。施工額=成果という考えも捨てないと!
・研究者を非正規雇用で済ますようでは、日本で研究しようと思う者が益々消える。
・ロングテイルじゃないけれど、全体の76.7%を占める私立大学に対する政策がキーじゃないかな
・研究のための環境づくりというが、大学教員にはそのために分厚い申請書を書くという仕事が増えて、研究環境がさらに悪化し、文科省だけが予算増で潤うという罠
・ゆとりカリキュラムは特に理科が最悪だったからな
・そもそも「影響力の大きい論文」=「科学研究を原動力としたイノベーションの創出」なんだろうか??
・研究をする者はノーベル賞受賞者からポスドクまで完全フラットな権限と給与でやらないとだめなんですよ。それが分からん奴らばかりなのです。
・マンパワーのレベルの低下だけを問題視するんじゃなく、研究環境の向上も課題に入れた方がいいと思う。
・グローバル人材云々とかいう(眉唾な)気の長い話よりも、研究者が研究できる環境を整備するのが最優先ってことですよね。
・原因は、大学院重点化と任期制だろ。留学生増やしたのが、トドメ。
・むべなるかな。運営交付金がどんどん削られ、外部資金獲得競争で長期的な研究がすみに追いやられ、研究の場が浮き足立っている。
・俺の父親が某学会の主要メンバーで論文誌の査読もやってるけど、日本の論文はどんどん酷くなってるって言ってたな。逆に凄いのは台湾の鴻海と中国の華為だそうだ。
・これは他国の発展による相対的低下なのか日本の研究力の絶対的低下なのか?
・マシンの一部を育てるだけの、院の粗製濫造(特にバイオ系)
・忘れちゃいけない、これもそれも、あの二位じゃいけないんですかの、ミンスのせいである。不毛の四年間は大きすぎる。
・つかまともな脳みそ持った研究者なら、とっくに海外へ出ていってるだろ。日本に残ってるのは海外へ出れない雑魚か、海外で優秀な功績残した凱旋組だ。そして凱旋組は論文ほとんど書かないw書いても海外向けで日本語の物は少ない。
・仕分けの結果、研究者や院生の士気がガタ落ちになった。今まで日本の科学技術を支えてきたのは層の厚さだったのに、その底辺(悪い意味じゃなく)の下支えを「意味がない」と決めつけた。
・団塊がポストを握っている上に定年が無いという恐怖のコンボが作動中
・若手が研究に割く時間や最小限予算を用意出来ない上司がのさばる環境が悪いんだろうね。
・福祉に金振り分けたんだから、そりゃこうなる。研究機関に金いってねーじゃん。
・日本の大学の良さを全部殺して、かといって欧米のいいところを移入することにも失敗して、既得権益持った無能だけがはびこってるのが日本の大学。有能な学生はさっさと就職するか、アメリカに行く。
執筆者:日本の科学技術力を憂う人